’09.4.29

小林武史さんの「楽壇生活60周年記念ヴァイオリンリサイタル」を聴いてきました。初めて演奏を聴いたのは、2005年秋に東京文化会館小ホールで開催されたソロリサイタル。その揺るぎのない演奏にものすごく引き込まれ、マチネ(昼間の演奏会)にもかかわらず、帰りにお茶をする気力もなかったことを思い出します。以来ファンになり、東京でのリサイタルを楽しみにしています。2007年に引き続き、3回目の今日も体調を整えて出かけました。

今回の記念リサイタルは新聞や情報誌でも取り上げられ、演奏曲に対する想いや、30年になる国際交流基金派遣文化使節としてのご活動等、様々な面を知ることが出来ました。

私は、演奏家の経歴や人となりよりも、今どんな演奏をしていて、それを聴いて自分が何を感じるかに重きを置くほうです。今回も「60周年」ということはひとまず脇に置き、そのステージに身を委ねました。

期待通り、太い柱のような何の迷いもない演奏! ステージに出て拍手があった後、まだ客席が少々ざわついていても間を置かずに演奏が始まるのですが、最初の音が出るやいなや、その勢いに圧倒されてしまうのです。今日は2階ギャラリー席で聴きましたが、楽器の響き(振動)が小林さんの身体からステージの床、そしてホール全体に伝わっていくのを、ダイレクトに感じることが出来ました(ライブを聴く醍醐味ですね)。演奏時間約40分のアルベリック・マニャール(フランス)の「ソナタ ト長調」は今回初めて聴いた曲でしたが、長いなどとは全く感じませんでした。「作品をものにする」レベル・状態が普通の演奏家とは違い、信念のようなものを感じました。

 

小林さんは、故・團伊玖磨さん始め、多くの作曲家に作品を委嘱されていらっしゃり、小林さんに献呈された作品もたくさんあるそうです。 「曲の委嘱→作曲→演奏」の一連の行程は、作曲家・演奏家ともに大変なプレッシャーのはず。並の精神力で出来ることではありません。ソリストとして、商業主義に振り回されることなく、「良い作品を広めたい」という信念を、お若い頃からずっと持ち続けてこられた小林さん。新聞のインタビューで「今回の演奏会は、区切りではない。むしろ出発点です」と仰っていました。これからも意欲的なリサイタルを楽しみにしたいです。

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