’10.6.12/6.19

関係者のみの会で、伴奏をさせていただきました。
体調にも波があるように、気分にも波があるのでしょうか。6月に入ってから疲れを感じる、というより、なぜか気持ちが落ち込みがちになっていました。

音に魂を込めるのに、いつもより時間がかかる・・・。
私はその場の勢いやノリで演奏できるタイプではないので、本番になれば何とかなるとは、なかなか思えません。
気分にも波があるなら焦っても仕方ない、と腹をくくり、楽譜の分析チェックや基礎練習を徹底しました。
また、こういう時こそオーケストラなど他の音楽を多く聴くチャンス。演奏曲を弾くばかりで煮詰まってしまうことがないよう心がけてみました。

両日とも本番中は必死でしたが、やはり自分はこうやって舞台でピアノを弾く仕事が好きなのだ、と心底感じました。
どんな仕事でも、気分や体調に波があるのは当たり前。
その都度出来ることを最大限やるしかないと、改めて思いました。

会場のピアノに関して。
前もって調律師さんに「軽めのタッチにして欲しい」とお願いした際、「公共のホールのピアノは、ピッチの調律は出来ても、タッチ加減の調整までさせてもらうのは難しい・・・。当日出来る範囲のことはします。」とのお返事でした。
今年に入ってから、なぜかこのように言われることが増えました。
ホール側、あるいはピアノを納品した業者側が、ピアノを「いじられる」ことに神経質になっているのかもしれません。
次に使う人が困るような極端な調整は論外としても、ピッチをそろえるだけでは、少し不安です。

12日には調律師さんがホールの了解を取って、ハンマーアクション部分に潤滑剤を塗って下さいました。
弾き始めは良かったのですが、プログラム後半になると油分が酸化してくるのか、却ってタッチコントロールがしにくくなってしまいました。
鍵盤の深さを10とすると、ピアニストはそのあらゆる段階をコントロールしながら弾くわけですが、6の次がすぐ10になってしまい、7・8・9が出来ないのです。

本当はコンサート終了まで調律師さんに待機して頂く(立会い)のが望ましいのですが、立会いは別料金になるため、いつもいて頂けるとは限りません。
「『弘法筆を選ばず』になれないといけないのかな・・・」
自分の楽器を持ち運べない(通常は)ピアニストの悲しいところです。


’10.6.5
〔平田真希子さんのリサイタル〕

(株)サウンドウェーブさんが応援されているロサンゼルス在住の若手ピアニスト・平田真希子さんのリサイタルを聴いて来ました。
会場は、響きも美しい「横浜市港南区民文化センター・ひまわりの郷(さと)」です。

「生誕記念の作曲家たち」と題し、今年生誕200年のショパンをプログラム後半に。前半には生誕300年のウィルヘルム・フリーデマン・バッハ(J.S.バッハの長男)、ショパンと同じく生誕200年のシューマン、そして生誕100年のバーバー。
他ではなかなか聴けないプログラムです。

平田さんの演奏を聴くのは初めてでしたが、「自分の言葉をしっかり持っている演奏家」でした! 
実際に弾くのみならず、演奏前に客席のほうを向いて腰掛け、曲について自分の言葉で語る平田さん。
(以前、別のピアニストのサロンコンサートで、やはり立ったままでなく腰掛けて語るのを見ました。話す量が長めであるためと思いますが、欧米では主流なのでしょうか?)

演奏者本人が話すことについて、クラシック界ではまだ批判的な意見も多いようです。
私も、曲に全く関係のない話や、雑談のような話を聞くのはあまり好きではありません。
でも、コンサートの流れにマッチした語りや、曲について自分の言葉で話せる語りなら大いに良いのではないでしょうか。

‘10.5.24
〔ブドウ糖とジクロテクトゲル〕

今年に入って愛用している2品です。
「頭が疲れた時にはチョコレートが効く」とよく言われます。糖分だけでなく、という成分がさせる効果があるのだそうです。
でも、毎日チョコレートを食べ続けていたら、脂肪の取りすぎになってしまって怖いですね。ジャズピアニストの小曽根真さんも「レコーディングの間中チョコレートを食べていたら、ブブッと(体重が増えてしまった)・・・」と、テレビで仰っていました。
そこで「ブドウ糖」。スーパーの飴・キャンデー売場に売っていると聞き、早速購入。

角砂糖のような感じですが、砂糖より早く溶け、口の中にざらつきが残りません。チョコレートよりもカロリーが控えめな上、脂質もゼロなので、安心です。
普段の練習・演奏の友にはこの「ブドウ糖」、本番演奏が終わった時には少しだけチョコレートをいただく、というようにしています。

「ジクロテクトゲル」は消炎剤で、練習・演奏後、前腕やふくらはぎに塗っています。
これまで、特に本番後の筋肉痛がひどく、腕や足だけでなく背中全体まで痛むので、演奏後に鎮痛剤を飲んでいました。
肌表面だけを冷やす冷却スプレーでは、全く効かなかったからです。
湿布を張っても今ひとつ・・・。
整形外科で処方される塗り薬は、クリーム状で乾くのに時間がかかったり、一般のドラッグストアでは買えなかったりしますが、このゲルはサラッと伸びて乾きも早く、きつい匂いもしないので使いやすいです。

体操の選手は毎日の練習後、鍼灸師のケアを受けると聞いたことがあります。
そこまで出来なくとも、自分で出来る小さなケアを怠らず、身体の声を聴けるようにしていきたいです。

’10.5.23
〔ヨコスカベイサイドポケットでの「ピアノ名曲コンサート」〕

「ピアノ名曲コンサート」もおかげさまで5回目。今年は「ショパン名曲集」です。
あいにく小雨の降る中でしたが、たくさんのお客様においでいただき、本当にありがたく思っています。

ほぼ作曲年代順に、前半に「夜想曲 No.2」「マズルカ No.6(Op.7-1)」「別れの曲」「革命」「幻想即興曲」「雨だれの前奏曲」
後半に「英雄ポロネーズ」「子守歌」「小犬のワルツ」「ワルツ No.7(Op.64-2)」「舟歌」を演奏しました。

今年は「オール・ショパン・プログラム」のリサイタルを2回(2種類)と、オーケストラとの共演(協奏曲No.1)をすることもあり、昨年から今年にかけて、いつも以上にショパン作品のコンサートを聴いています。CDもたくさん聴き、テレビもたくさん見ています。
それはとても良かったのですが、現代のピアニスト、とくにあの「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(今年のテーマはショパン)」に招聘されているピアニストの演奏を聴いていると、「これがグローバルスタンダ−ドなのだろうか・・・」などと思ってしまい、自分の演奏に迷いが出て困りました。
4月の「大倉山水曜コンサート―バッハ・平均律リレーコンサート」の時もそうでしたが、自分を信じることの大切さ・難しさを、またもや感じさせられました。
1週間前からは他の演奏を聴くのをいったんやめ、ひたすら自分の音に浸るよう、神経を集中させていきました。

本番では、これまで何度も弾いている曲も多かったのですが、1曲1曲にとても神経と体力を遣いました。
2週間前の通し練習の時も感じましたが、ある意味「気楽に」弾けるはずの曲でも、なぜこんなに消耗してしまうのだろうか・・・。
プログラム前半からこの状態で、最後までもつのだろうか・・・。
不安でパニックになると、それこそ演奏が崩れてしまいます。
変に体力温存など考えず、「全部弾き終わったら倒れてもいい」と開き直り、全身全霊で臨みました。

軽快な「小犬のワルツ」を弾いている時、なぜか顔に「フフッ」と笑みが浮かびました。
心の中は必死で、最後の音が終わるまで全く気が休まらなかったのに、です。
頬がひきつったというわけでもなく・・・。
お客様からのアンケートにも「楽しそうに弾いていらっしゃるのが印象的でした」等のご感想が。
顔が微笑んでしまうような経験は初めてだったので、演奏中は少し焦りました。

アンコール曲として2曲演奏させていただきました。
「夜想曲 遺作 嬰ハ短調」とプログラム最初の曲「夜想曲 No.2」です。
本当は、2曲目には別の、テンポの速い、軽やかな曲を予定していました。
ところが予想以上に心身が消耗してしまっていたので、再び速い曲にギアチェンジ出来ないと感じ、変更しました。
弾く予定だった曲は、大切に温め、またの機会に弾きたいと思います。

後日、レッスンしていただいている井上二葉先生にお電話でご報告。
「曲ごとの消耗が激しかった」と申し上げたところ、
「上を目指している以上、気楽に・楽しんで弾くのは無理。楽しく弾けるのはアマチュア。
私達は、聴く人が楽しんで下さっていれば良い。」とのお達し。
「精神的にあまりに辛いようなら、友人同士で聴き合う場を増やしては?」とアドバイスもいただきました。

今回は楽譜についての注釈を入れました。
●そもそもショパンの楽譜が出版社によって音が違うのはなぜか。
●「ナショナル・エディション」と「パデレフスキ版」について。
●今日のリサイタルでは「ナショナル・エディション」を使用する。
「別れの曲」「幻想即興曲」「夜想曲 遺作」の3曲は聴き慣れたものとの違いが大きいため、「名曲コンサート」の趣旨に踏まえ、「パデレフスキ版」を使用する。

以上を譜例も入れてA4紙1枚にまとめ、プログラムに挟み込みをしました。
ナレーションで語ってもらうのではなく、挟み込み文にしたのは、このようなことに興味のあるお客様ばかりではないかもしれなかったからです。
興味のある方にはお読みいただき、そうでなければ読まずに捨てても構わない、という形にしてみました。

お客様からのアンケートで特にヒントになったのは、「音色の美しさに鳥肌が立った」というご感想でした。
知人の「高橋希代子の『幻想即興曲』は世界一だ」という言葉も、何かとても大切なことを考えさせられているように思います。
秋の協奏曲&リサイタルは10月・11月。
「ショパン・コンクール」の結果も各地で報道されている頃でしょう。
それらの演奏を聴いて、もうあれこれ迷ってばかりではいけません。
「まず自分のよさを信じること」「あせらず 人と比べず ひたすら自分の音を磨くこと」と気持ちを新たにしました。


’10.5.16
5/23・ヨコスカベイサイドポケットでの「ピアノ名曲コンサート vol.5」チケットを販売して下さっている、横須賀の楽器店(株)オクターヴさんより、「扱い分チケット完売」のお知らせをいただきました。
いつもいつも本当にありがとうございます!

お求め下さったお客様が当日を楽しみにして下さっていることをひしひしと感じます。
今回もお一人お一人に、本当に「来て良かった」と感じていただけるリサイタルにします!


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