’10.7.30
			〔フェスタサマーミューザ2010  東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団〕
ミューザ川崎で毎年夏に開催されている「フェスタサマーミューザ」。
			確か4年ほど前に、小川典子さんのピアノリサイタルを聴きに行き、とても面白いイベントだと思ったのですが、なぜかそれから行く機会がなく・・・。
			久しぶりに出かけたところ、さらに充実した内容になっていました。
会場の「ミューザ川崎」はJR川崎駅直結で、方向オンチの私でも迷子にならないホールの一つ。
			これまで会場に行くのに何度迷ったことか・・・。
			その上先週、左足首を捻挫してしまい、杖を使っているので、段差なく行ける会場はありがたいです。
「オーケストラで夏満開!! 首都圏で活躍する9つのオーケストラが川崎に集結!(なぜか東京ニューシティ管弦楽団がないですが・・・)」のキャッチフレーズ通り、日替わりで違うオーケストラの演奏を楽しめる内容。
			もちろんダブっている曲目はありません。
			「短時間で低料金の公演中心。気軽にクラシックを楽しめる音楽祭」ともあり、
			20時開演で21時過ぎに終わる、休憩なし・70分の公演や、公開リハーサル、指揮者によるプレトークなど、通常のコンサートとは一味違って、イベント感を楽しめる内容が盛りだくさん。
			22日間の日程には、他に子供対象のコンサートや、川崎市内の音楽大学オーケストラ(洗足学園大・昭和音楽大)、パイプオルガンのコンサートなどもありました。
私が出かけたのは、矢崎彦太郎指揮:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の公演。
			曲目はラヴェル「マ・メール・ロワ」と、サン=サーンス「交響曲第3番『オルガン付き』」。
			ラヴェルはピアノ連弾でも演奏したことがあって大好きな曲ですし、何と言っても「オルガン付き」を生で聴きたかったのです。
17時からの公開リハーサルは本番と同じ席で聴くはずだったのですが、歩くのに思ったより時間がかかって遅刻してしまったので、スタッフの指示に従い、一番上の4階席に入って聴きました。
			なので、指揮者のしゃべっている言葉が残響であまり聞き取れず、残念・・・。
本番の席は2階の真正面。
			席としてはベストで、このホールの音響の良さを堪能できました。
			ラヴェルはやや硬い感じの演奏でしたが、サン=サーンスは集中されていたと思います。
			サン=サーンスの曲でのパイプオルガン、もっと底鳴りして鳥肌が立つかと思ったのですが、このオルガンの持ち味なのか、席位置のせいなのか、素朴というか、あまりズシンときませんでした。
さて、入口で渡された「総合プログラム」、保存版にしたいくらい、充実かつ楽しい内容でした。
			各日とも、ただプログラムや出演者プロフィールが書かれているのではなく、指揮者やコンサートマスターによる「今日の聴きどころ」として書かれていて、とても読みやすくまとまっています。
			読んでいると、あれもこれも行きたくなってしまいます。
			今年は今日しか行けませんでしたが、来年はもっと早く情報収集して、色々聴きに行きたいと思いました。
音響の素晴らしさと、駅直結で周辺店舗が豊富な(飲食店での割引サービスまでありました)立地に恵まれた「ミューザ川崎」ならではの音楽祭ですが、イベントとして、とても工夫され、成功していると思いました。
			また、ホームページ上の「スタッフブログ」のアップが早いこと!
			リハーサル(公開・非公開とも)が終わると、すぐその様子がアップされ、本番が終わるとまたすぐアップされています。
			舞台袖の様子や終演後の出演者のスナップが中心で、コンサートを聴いたあとに見ても楽しめます。
			これらの「ワクワク感」はどんな仕事でも大切なこと。
			見習いたいです。
			・ ・・オーケストラについて。
			東京・神奈川だけでも9〜10ものプロオーケストラがありますが、団員になるのは至難の技です。
			基本的に欠員補充しかなく、毎年募集があるわけでもないので、1つのポストに100人近い応募はザラ。
			ものすごく狭き門です。
			母校の音大でも、卒業してすぐ(といっても、学部卒業後に研究過程を経てから)団員として就職できるのは、地方のオーケストラを含めて年に1人か2人。
			海外留学中に募集のチャンスを待つ人も少なくありません。
なので、オーケストラは「エリート中のエリート」集団のはず。
			それなのに、演奏にあまり魅力を感じられないのはなぜなのか・・・。
			学生時代はあんなに音が輝いていたのに、それが失われてしまうのはなぜなのか・・・。
			特にヴァイオリンをはじめとする弦楽器は、ピアノよりずっと早くから世界レベルに達していました。それなのになぜ・・・・
			ずっと疑問に思っていました。
何よりも、演奏中のつまらなそうな表情は、聴衆として全く理解できませんでした。
			海外のオーケストラは、音色の豊かさはもちろん、その呼吸まで感じ取れるほどなのに・・・。
			学生の部活動ではないのですから、ただぴったりあっていれば良いなどというはずがありません。
			下手をすると学生やアマチュアの方が、よほど熱意がこもっていたりします。
			「演技でもいいから何か感じさせて!」と思うこともしばしばでした。
「本当に魅力ある才能はソリストを目指すので、オーケストラには入らない」
			「一般企業と同様、日本の集団は、自己主張や突出した個性を良しとしない」
			そういうこともあるのかもしれません。
			でも私は、「音楽家は個性の塊」だと常日頃感じています。
			演奏形態や表現の仕方は様々でも、プロだったら何かしらの相乗効果を生み出せるはず。(・・・と自戒を込めて・・・)
最近はオーケストラも変わりつつあり、オーケストラの顔とも言えるコンサートマスター、特に「ソロ・コンサートマスター」と呼ばれるポストに、ソリストとしての活動も豊富で、かつ個性ある若手を起用するようになってきました。
			世代交代も進み、首席クラスの奏者を中心に、ソロらや室内楽での活動を続ける団員も多いです。
			「クラシックは敷居が高い」「退屈」と言われてきたのは、演奏者側に「お客様と向き合う意識」が希薄だったことも一因だと思いますが、
			他の芸能同様、お客様に真正面から向き合う意識を持った奏者が増えれば、日本のオーケストラだってきっと変わるのでは?
			色々なオーケストラを聴き比べできる「フェスタサマーミューザ」
			ぜひ来年も楽しみにしたいと思います。