’10.8.9
〔協奏曲のレッスン〕

井上二葉先生のレッスンを受けてきました。
10/24に演奏予定の、ショパン「ピアノ協奏曲 第1番」。
先生は夏の間は別荘で過ごされるので、これまでは東京に帰られてから伺っていたのですが、今年は初めて別荘まで伺ってきました。
母屋とは別の、山小屋のような風情の練習棟の中には、スタインウェイのA型が1台。
弾くと何ともいえない響きに包まれます。

本番まで日がある時、先生は色々なことをそれこそ徹底的に教えて下さるのですが、今回の最重要ポイントは「指使い」でした。
協奏曲はソロ曲と違い、やわらかさや繊細さを追求した音作りではオーケストラの中に埋もれてしまい、ソロ楽器としての音色が際立ちません。
自分で考えた指使いではまだまだ音がやわらかすぎで、一番太い1の指(親指)の使い方を徹底チェックされました。


実はこれまで、「協奏曲」があまり好きではありませんでした。
はっきり言って、客席で聴いているとソロ楽器の音がよく聴こえないからです。
子供の頃に協奏曲を生で聴く機会がなく、CDの音(ソロ楽器は別マイクで拾い、オーケストラより大きく聴こえるよう編集している)に慣れきってしまったせいだと思いますが・・・。
聴きに行って何度もがっかりした挙句、「協奏曲はテレビかCDで聴く!」と決めてつけてしまいました。
聴きたい演奏家のコンサートも、協奏曲ではなく、必ずソロリサイタルの方に出かけていました。

次第に、pp(とても小さな音)がよく聴こえない大きなホールより、小さなホールでのコンサートを好むようになり、必然的にオーケストラのコンサートからも足が遠のいてしまい・・・。
「生で聴くのはソロと室内楽まで。それ以上はCDかテレビ」になってしまっていました。

これまでに私が協奏曲を演奏したホールの規模は、最大で1000席でした。
でも、次の会場「よこすか芸術劇場」は1800席。
今更ながら、大きなホールでの交響曲や協奏曲のコンサートに足げく通うようになりました。

「よこすか芸術劇場」は大きいだけでなく、舞台間口の垂れ幕やカーテン、クッション部分の多い座席(すわり心地は良い)など、音を吸い込んでしまう要素が多く、私にとって不安なホールです。
「○○(著名演奏家)の音もこんなにこもって聴こえるのに、果たして自分のピアノの音が通るのだろうか・・・」
通ううちに、この会場は1階席より2階・3階席のほうがよく聴こえると気づくのですが、大きなホールの空間の広さに、自分の表現の拡大を要求されているのは事実。

大きな音といっても、ただ力を入れてキーを叩いたのでは「近鳴り」するだけで遠くまで響かず、音色も美しくありません。
腰で支えた上半身、そして腕全体をいかに脱力させるかは、いつも気をつけていることですが、次なる課題は「もっとよく通る音」。
自信を持って弾くために、今日教わったことをさらに工夫して練習する毎日です。


友人のフルーティストで「劇団四季」でも演奏されている青木三木栄さんがおっしゃっていたこと、
「皆で作り上げるミュージカルも好きだが、自分の音と向き合うソロ活動も大事にしたい」
当時は漠然としか分からなかったその意味が、やっと実感できてきました。
・・・自分はこれまでほとんど「自分の音と向き合う」ことばかりしてきて、「皆(大勢)で作り上げる」ことにはあまり興味を持てずにいた。
でもこのままでは結局、音楽のものすごく狭い部分しか知らずに終わってしまうのではないか?
今、必要に迫られてとはいえ、実際に大きなホールでのオーケストラ公演に出かけることが増え、自分の表現も拡大させようと努力しているのは、大きなチャンスではないのか?

協奏曲のソリストとして、孤独や緊張に不安を募らせるばかりではなく、
大編成の本当の魅力を実感し、実践しようと、とても前向きな気持ちになってきました。


Indexのページを新しいウインドウで開く>