’10.11.28
〔藤沢リラホールでの「リサイタル at リラホール vol.5」〕

「リサイタル at リラホール」もおかげさまで5回目。今年は「ショパン・プログラム 夜想曲の世界」です。
横須賀での「ショパン名曲集」と同様、ショパンの生涯のお話も交えながら進めました。
前半は「夜想曲 No.2」
「幻想即興曲」
「夜想曲 No.5」
「エチュード3曲(別れの曲・エオリアンハープ・革命)」
「夜想曲 No.8」。
後半は「バラードNo.1」
夜想曲の開拓者・フィールドの「夜想曲 No.12」
続いてショパンの「夜想曲 No.13」
「舟歌」
「夜想曲 遺作」を演奏。

11月はコンサートがとても多い時期で、10月に協奏曲を終えたばかりということもあって不安でしたが、藤沢リラホールでのチケット売り上げが伸び、とても有難く思いました。
藤沢リラホールでは開館20周年記念事業として、5月にディーナ・ヨッフェさん、11月に舘野泉さん、12月にリューボフ・チモフェーエワさんのピアノリサイタルを開催されています。
私のリサイタルは、それに挟まれるような日程だったのですが、ホールの方は、チケット売り上げが伸びたことを喜んで下さっていて、恐縮しました。

本番は、先日の三浦での反省も踏まえ、改めて「何があっても焦らない。あわてない」「その時の響きに身をゆだねる」気持ちで臨みました。
おかげで気持ちの乱れは少なくて済みましたが、これまでの身体の疲れに加え、頭で考えすぎていたせいで頭も疲れ、弾き間違えてしまったところもあり、反省です。
毎回違う、心の状態と身体の状態。
「出来ることは全てやってきた」「終わったら倒れてもいい」と覚悟を決めて演奏し、曲間のお話では体力温存のため、ピアノに身体を少し寄りかからせて立ちました。

今回使った楽譜は、全て「ナショナル・エディション(エキエル版)」です。
5月・横須賀のリサイタルでは、「名曲コンサート」の趣旨を踏まえ、音の違いの目立つ「幻想即興曲」「別れの曲」「夜想曲 遺作」の3曲のみ従来の「パデレフスキ版」を使いましたが、今日のリサイタルではナショナル・エディションで統一しました。
同じ曲でも音が違う・・・慣れ親しんだ音を変えるのは予想よりも時間がかかりました。
当初は違和感もあって、なかなかスムーズにいかず、
「面倒だから、パデレフスキ版のままでもいいか・・・」
「新曲や、初めてリサイタルで弾く曲もあるのだし、無理して変えなくてもいいのでは・・・」などと思ったこともありました。
でも、自分なりによく考えて決めたことを、早々にあきらめる気にもならなかったので、あまり自分の可能性を制限してしまわないよう、練習を重ねました。

終演後は、いつも通りロビーでお客様のお見送り。
お求め下さったCDにサインをさせていただきながら、「ミスがあったのに、CDが良く売れているみたいだな・・・・・」などと感じている図々しさ。
有難さはもちろんでしたが、もっと良い演奏がしたかったと、一層悔いが残りました。


今回の準備を通して、「演奏家はストレスのかかる仕事」だとやっと、本当にやっと自覚できました。
そのきっかけは食べ物。
練習の合間、糖分補給のためにブドウ糖を食べていましたが、口の中でサラッと溶け、「噛む」必要のないブドウ糖では、だんだん物足りなくなってきたのです。
板チョコレートやクッキーなどを食べていて、ふと「口寂しくて、何かを食べたくなっているのかもしれない」と、気づきました。
気づかずに放置していたら、このまま無駄食いし続けていたかもしれません。
お菓子ならともかく、もしお酒だったら、大変なことになるところでした。

「演奏活動だけで生活できる人は、ごくわずか」
音楽を志す人なら、子供の頃からずっと、そう聞かされ続けているでしょう。
だからこそ、演奏の仕事を何よりも嬉しく感じる。
私も「一番好きなことが出来るのだから、ストレスなど無縁」と、本気で思っていました。
よくよく考えたら、いくら好きなことでも、遊びではなく仕事なのですから、プレッシャーやストレスのないはずがありません。
なのに、ずっとそのことから目を背けてきてしまった・・・
心身が悲鳴を上げるわけです。

身体のケアに気を遣うようになって4年余り。
やっと心のケア不足に気づきました。
時間がかかりすぎてしまいましたが、気づけて良かった。
今年一番の反省点になりそうです。


’10.11.23
〔三浦シーサイド少年少女合唱団の定期演奏会〕

三浦市の「シーサイド少年少女合唱団」の定期演奏会で、ゲスト演奏をさせていただきました。
小学1年生から中学3年生までの合唱団ですが、とても発声が良く、のびのびとした歌声にとても感心しました。

定期演奏会では毎回、「プロの生演奏を聴く『ゲストコーナー』、そしてプログラム最後の『プロとの共演』を子供たちへのご褒美に」されているそうです。
いつも指導に当たっていらっしゃる和田智子さんから、
「今年はショパン・イヤーなので、ぜひ映画『戦場のピアニスト』で使われていた『夜想曲 遺作』『革命のエチュード』『バラード 第1番』を、お願いします。」と、リクエストをいただきました。

曲の簡単なお話に、映画のことも織り交ぜながら演奏。
アンコールに「小犬のワルツ」も演奏し、その後に皆さんとの共演。
「ひとつだけの命」と「さとうきび畑」の伴奏をさせていただきました。
歌詞が10番まである「さとうきび畑」は、全部歌うと10分以上かかり、歌詞を覚えるのも大変です。
当初はカット版で演奏する予定だったそうですが、
「子供達が『どうせやるなら全部やる!』と言ってきた」とのこと。すごい!
普段、暗譜で困っていて、長い新曲に四苦八苦している自分、
つい覚えやすい曲を選ぼうとしている自分を、反省しました・・・。

今回は、ピアノの音の響きで反省点がありました。
ホールの響きは通常、リハーサル(空席時)より本番の方が悪いものです。
コートなど、着るものが厚くなる季節は、クロークのあるホールは別として、特に悪くなります。
でも、今日は逆でした。本番の方が音の返りがずっと良かったのです。
そこで「ラッキー!」と思えれば良かったのに、却って響きをコントロールしづらくなり、思わぬ事態に焦りました。

リハーサル中、響きが思うようにならず、つい色々弾き込んでしまったこともあり、手が疲れていたこともマイナスでした。
抜けてしまった音もあり、強弱表現ももう一つ・・・。
最後の「さとうきび畑」、右手をオクターヴに広げるのがとても大変でした。
オクターヴが精一杯などというのは初めてで、今後充分注意したいと思います。


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