’11.8.10
〔フェスタサマーミューザKAWASAKI 2011  日本フィルハーモニー交響楽団〕

ミューザ川崎で、毎年夏に開催されている「フェスタサマーミューザ」。
昨年に引き続き、今年も楽しみにしていたのですが、東日本大震災でホール内部が損傷してしまい、今年は川崎市内の複数の他会場を使って開催されていました。

一番多く使われていた「昭和音楽大学」は小田急線沿線・新百合ヶ丘でしたので、自宅からは行きにくく、残念。
JR武蔵中原駅直結の「エポックなかはら」で行われた、園田隆一郎指揮/日本フィルハーモニーの公演に出かけました。
ロッシーニの序曲に、モーツァルト「ピアノ協奏曲 第9番『ジュノーム』」と「交響曲 第35番『ハフナー』」。
ソリストが、以前にテレビで聴いて素適だった河村尚子さんでしたので、ぜひ聴きに行きたいと思っていました。
「ジュノム」を生で聴くのも初めてです。

第1楽章は、ややばらついた印象だったものの、続く第2・第3楽章ではまさに本領発揮、とても充実した演奏でした。
モーツァルト作品を弾く時の「ごまかしの効かない怖さ」は、クラシック演奏家にとっておなじみですが、「ハフナー」も、とても伸びやかな演奏でした。
やや、全部の拍をきっちり弾きすぎかな・・・とも感じましたが、自分にとっても良い勉強になりました。


今日は「休憩なし・70分間」の公演でしたので、1曲目の序曲の時から協奏曲用のピアノがステージに出ていました。
協奏曲終了後、ピアノをステージ端に移動させるのですが、
その間、指揮者とピアニストが再度ステージに出て、お話をして下さったのです。
お話と言っても、「どこに住んでいる」とか「日本に着いたのは1週間前」とか、特別なことではなかったのですが、単なる舞台転換の時間が、とても和やかな雰囲気になりました。
ステージが整う頃には、次の曲「ハフナー」の説明になって、自然な流れ。
「休憩がないなら、こういうやり方もいいな」と、とても楽しく思いました。

曲解説が楽しく、とても充実している「総合プログラム」。
今年は「川崎市を楽しむ ゆったり休日MAP」が入っていて、「新百合ヶ丘駅周辺/川崎駅周辺おすすめスポット」などが紹介されていました。
会場が複数にまたがってしまったことを、逆手に取ったアイデアとも言えますが、おもしろい!
MAPを見ながら、昼公演なら「帰りは○○に寄ってみようか」、
夜公演なら「△△で遊んでからコンサートを聴く」など、楽しみも広がります。

会場の都合なのか、原発事故などによる出演者側の都合なのか、
昨年は全22日間だった「サマーフェスタ」、今回は13日間でした。
でも、イベントとして充分に工夫され、お客としては「開催してくれて良かった」と感じさせてもらえたコンサートでした。
私も、4月のリサイタルを中止にしなくて良かったかも・・・などと思いながら、帰途につきました。

‘11.7.20
〔天満敦子さん&岡田博美さんのデュオリサイタル〕

横浜みなとみらいホールの「アフタヌーンコンサート」シリーズ、
昨年に引き続き、今年も出かけました。
岡田博美さんは以前からファンでしたが、天満敦子さんの演奏を聴くのは初めてです。

前半にソナタ・後半に小品という、私も好きな、少し懐かしい感じのプログラム。
前半は、ヴァイオリンソロとピアノソロで1曲ずつと、
フォーレの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ No.1」。
そして後半はコンサート・ピースの数々。
最後は天満さんの代名詞とも言われる、ポルムベスクの「望郷のバラード」で締められました。

特に後半の小品は、まさに「巨匠」の演奏でした。
自分の言葉ですべての音を語り、その言葉が芸術になっているすごさを、まざまざと感じました。

正直なところ、「岡田博美さんほどのピアニストが、なぜ『小品』の伴奏を弾くのだろう・・・」と疑問に思っていました。
でも、聴いて分かりました。
前半のソナタが素晴らしかったのはもちろんですが、
後半の小品も、信頼・尊敬しあう音楽家同士でなければ生み出せない、何か「格」のようなもの、
伴奏者として活躍されているピアニストとはまた違う、ソリスト同士が醸し出す「華」のようなものを感じました。

でも、ピアノソロ曲ももう少し聴きたかったな・・・
それは、リサイタルのお楽しみにしたいと思います。

’11.6.27
〔浜田理恵さんのリサイタル〕

北鎌倉女子学園中学・高校音楽科の大先輩、ソプラノの浜田理恵さんのリサイタルを聴きました。
浜田さんも、「ニューイヤー・オペラコンサート」でおなじみの歌手。
リサイタルといっても、北鎌倉女子学園が毎年演奏家を招聘して、生徒さんが鑑賞する「学校行事」で、一般には非公開です。
今年の5月から、中学普通コース対象の「楽器指導オプション」で講師をさせていただいているのですが、今日は講師・保護者席で、この貴重なリサイタルを聴くことが出来ました。

テノールの小山陽二郎さん、ピアノの浅野菜穂子さんとともに、「ラ・ボエーム」と「蝶々夫人」の名アリアを中心に演奏されました。
深々とした、パワーのある声!
どの音も考え抜かれた、どの言葉にも神経が注がれた充実した演奏に、引き込まれました。
音を一つもおろそかにしない・・・当たり前のようですが、実に難しいこと。
襟を正す思いでした。

オペラアリアを続けて歌うのは、とてもハードなのに、中高生にも分かりやすく、楽しくお話を交えながら、リサイタルを進めて下さいました。
5月に聴いた福井敬さんのリサイタルもそうでしたが、歌い手自身がお話をされるのは、本当に驚きです。

お話は、曲のことが分かるだけでなく、演奏者の人となりが、とても伝わってきます。
「お話して下さると、やはり舞台と客席がグッと近づいて嬉しいな・・・」
疲れてくるとトークを負担に感じてくる自分自身を、反省しました。
負担に感じるのは、おそらく「テキパキしゃべって、テキパキ進めなければ」と思いすぎているからでしょう。
演奏と同じテンションでしゃべる必要なんてないのに・・・
余計な思い込みを、一つ外せたような気がします。

’11.6.18
〔伴奏の仕事〕
関係者のみの会で、伴奏をさせていただきました。
ブラームス「ヴァイオリンソナタ 第2番」。
音の内面をしっかり見つめ、なおかつ、とてもリラックスした気持ちでないと、思うような演奏になりません。
考えても答えが出ない・・・そんな思いをたくさんする曲です。

ヴァイオリンの先生や、ピアノの先生をしていらっしゃる方の多い、この会。
ヴァイオリニストやピアニストは、どちらかというと「細かい」人が多いものですが、ここはギスギスしたところがなく、毎年とても楽しく参加させていただいています。
主宰の先生ご夫妻のお人柄ゆえと思います。


これまでは、どんな演奏会でも、まず「自分がきちんと弾かなくては」ということだけで精一杯でした。
やっと、演奏会それぞれの雰囲気を、楽しめるようになってきました。
その中で人の演奏を聴いていると、その人の音楽への関わり方や、音楽を続けるペースが見えてくるのです。
「いろいろなやり方がある」と実感出来たこと。
一つの価値観に縛られがちだった気持ちが、開放されるような思いでした。

’11.6.16
〔フランチェスコ・トリスターノさんのリサイタル〕

昨年の日本デビューで話題になった、ルクセンブルグ出身のピアニスト、フランチェスコ・トリスターノさんのリサイタルを聴きました。
「逗子文化プラザ ティータイムコンサート」という、年4回・平日昼間・低料金のコンサートシリーズ。
このようなコンサートシリーズが増え、聴く側としては嬉しいことです。
逗子文化プラザのなぎさホールは、音響がとても良くて大好きなホール。
昨年にトリスターノさんのリサイタルを聴かれた井上二葉先生が、とてもほめていらしたこともあり、今日は楽しみにしていました。

ドビュッシー「映像」、バッハ「パルティータ第6番」、ジョン・ケージ「ある風景の中で」、そしてムソルグスキー「展覧会の絵」。
何とも言えないスマートな音色と、キレがあって、しかも攻撃的でないリズム感に、聴いていて吸い込まれるようでした。

全くペダルを使わずに演奏されていた、バッハ。
ペダルを使わなくても、ピアノの音は充分に表情があり、伸びやかさがあることを、突きつけられたような思いがし、焦った練習ばかりしていたことを反省しました。
帰宅してさっそく自分の練習に取り入れたのは、言うまでもありません。

後日、東京公演の批評が新聞に載りました。
(バッハとジョン・ケージ、そして自作曲のプログラムで、光の演出もあったそうです)
『静謐でありながら、エキセントリック』
『クラシック育ちの高度なテクニックが、ジャズやテクノにも通じる現代的センスで生かされるおもしろさ。』
『ビビッドな感性。蒸し暑い夜の清涼剤。』
など、さすがと感じる表現。

逗子公演の際、東京公演のチラシや案内などが全くなかったのは、残念でした・・・
インターネットなどで調べれば良いのですが、やはり実物のチラシを見ると、よりコンサートのイメージが伝わってきて分かりやすいし、嬉しいものです。
「コンサートは、チラシを見るところからもう始まっている」と思うのですが・・・

後日、NHKの番組にも出演されていたので、そのお知らせがあっても良かったのではないでしょうか。
主催者が違えば仕方ないのかもしれませんが、聴く側にとっては、ぜんぜん関係のないことですよね・・・

’11.5.28
〔福井敬さんのリサイタル〕

「NHKニューイヤー・オペラコンサート」でもおなじみ、福井敬さんのリサイタル「春に歌う」を聴きました。
ピアノは谷池重紬子さん。
今日は、日本歌曲のCD「悲しくなったときは ―福井敬、日本を歌う」の発売記念で、プログラム前半が全て日本歌曲、
後半はシューベルトの歌曲とオペラアリア、というプログラムでした。

会場のサントリーホール・ブルーローズは、これまでどちらかというと「レセプション会場」という印象しか持てずにいたのですが、今日は違いました。
会場の隅々に音楽を伝える意思と能力がないと、何だか散漫な印象になってしまう・・・
そんな杞憂が吹き飛ぶ、1曲1曲がとても充実したリサイタル!
「本物を聴いた!」という満足感を、とても感じることが出来ました。
客席を歩きながら歌う、などの演出が決して「パフォーマンス」に終わらないのは、やはり音楽が本物であるからこそ。
お話も相まって、とても和やかな雰囲気のリサイタルでした。

’11.5.22
〔平田真希子さんのリサイタル〕

「スカぴあ」でもご一緒した、平田真希子さんのリサイタルを聴いてきました。
ロサンジェルス在住の平田さん。毎年恒例の日本でのリサイタルも、今年で11年目になるそうです。

バッハ「ゴールトベルグ変奏曲」とリスト「ソナタ ロ短調」。
演奏時間が50分近い「ゴールトベルグ」1曲だけのコンサートもあるほどなのに、さらに30分かかる、リストのソナタともカップリング。
この大曲2曲を、1回のリサイタルで聴くのは、初めてです。
リストの「ソナタ」は、先日の「スカぴあ」でも演奏されたのですが、そのときは客席では聴けなかったので、今日のリサイタルを楽しみにしていました。

ドラマティックで迫力あるリストも素晴らしかったのですが、美しいフレージングと緻密な声部バランスで演奏されたバッハが、より強く印象に残りました。

平田さんのリサイタルを聴くのは、昨年に引き続き2回目。
平田さんの演奏には、「私はこう感じます。こう思います。」という強いメッセージがあります。
プログラムの曲目解説に書かれていた、
『なぜバッハがこの曲を書いたのか、なぜここまで学者・奏者・聴衆をとりこにするのか、お聴きになって私と一緒に考えて下さい。』という一文には、驚きました。
「この曲の素晴らしさを、一緒に考えて欲しい」と、聴く側にも、強く積極性を求めるメッセージ。 
癒されるコンサートとはベクトルが違いますが、ぜひこのスタイルを貫いて欲しいと感じました。

’11.5.14
〔スカぴあ〕

「スカぴあ 〜横須賀ゆかりのピアニスト達によるピアノ音楽祭」に出演しました。
昨年にカナダから「寿帰国」されたピアニスト・宮川久美さんの
『地元横須賀で、音楽祭をやりたい!
誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分たちでやってしまおう!』
という提案に乗って開催した音楽祭です。

昼間は、ソロ演奏の部。
夜は、連弾&2台ピアノの部。
『ピアニスト達が、ただソロを弾くだけでなく、一緒に演奏したらおもしろいじゃない?』という提案にも大賛成。
5年前の2006年、宮川さんを中心に、同じく横須賀で開催された「モーツァルト生誕250年/モーツァルト効果を横須賀に!」コンサート。
これに続くものが出来たら・・・という思いもありました。
以前から彼女のファンだった私にとって、またご一緒出来たのは嬉しい限りです。

本来、人と一緒にやるのは楽しいはずなのに、前回の私は自分のことだけで精一杯で、殻に閉じこもるばかりでした。
今回、「皆と積極的に関わって、音楽祭を作り上げていこう」と思えた自分に、ホッとしました。

宮川さんの曲の仕上げ方を間近で見ることが、一番の狙いだったのですが、
音楽を大きくとらえる感覚はもちろん、気持ちのおおらかさ、余裕まで教わったように思います。
一番驚いたのは、宮川さん&平田真希子さんによる「ラプソディ・イン・ブルー」の演奏前。
音楽祭も終盤、今回の目玉でもあるこの曲。
お二人は「はっちゃけて来ます!」と言って、ステージに出て行きました。
すごい・・・。

お二人が、ただの気分で弾いているわけではなく、確固とした構成力と技術があってこそなのは、もちろんのこと。
「はっちゃけたい」と思ったところで、演奏が崩れるだけの私。
その場の勢いやノリで演奏できるタイプではない私にとって、それは本当に、本当にうらやましかったです・・・。


2台ピアノ作品を演奏出来たことも、収穫でした。
これまで2台ピアノには、あまり良い印象を持っていませんでした。
緊密な連携の必要な連弾よりも、聴いていて雑に思えたのです。
2台のピアノの響きが一体にならず、バラバラに聞こえる・・・
中には「6台ピアノ」などもありましたが、大味、という感想しか持てずにいました。
「ソロと違って『楽譜を見て弾ける(暗譜しなくて良い)』安心感が気のゆるみとなって、演奏に出るのではないか」とさえ思っていました。

でも、皆で練習を重ねていると、「ソロに始まり、連弾、2台ピアノと、スケールが広がっていく音楽祭」の全体像がイメージ出来てくるのです。
そして、何だか「自分のように、つい細部にこだわってしまう奏者がいてもいい」とも思えてきて、5年前よりずっと楽しめている感覚が湧いてきました。


お客様のご感想ですが、皆様「すごく楽しかった!」と、口を揃えて喜んで下さいました。
1台8手の「ラデッキー行進曲」や、2台8手の「威風堂々」では、客席から手拍子が起き、私たちもとても嬉しく、楽しい気分で演奏することが出来ました。特に話題になったのが、夜の部の前に行った「プレ・イベント 『愛の夢』弾きくらべ」。
もともと「ピアニストの弾きくらべ/聴きくらべ」的な音楽祭ですが、「同じ曲を弾きくらべ」ということで、リストの「愛の夢 第3番」の冒頭部分(40秒ほど)を、出演者が次々と演奏しました。
「同じ曲でもピアニストによって、こんなに弾き方が違うなんて、音色が違うなんて、ビックリした!」という驚きのお声を、たくさん頂戴しました。

もう、来年度に向けての準備を始めています。
次回は、もっともっと充実した音楽祭に出来るよう、皆で励みたいと思います。

’11.5.1
〔逗子童謡の会〕

ソプラノの桑田葉子さんと「逗子童謡の会」にお邪魔してきました。
先週のリサイタルに続けての本番になりますが、桑田さんとはぜひご一緒させて頂きたくて、お引き受けしました。

ソロ演奏では、新発売となったCD収録曲の「むこうむこう」、
金子みすずの詩による「こだまでしょうか」「わらい」、
同じくCD収録曲「この道」に続けて、オペレッタ「メリー・ウィドウ」の「ヴィリアの歌」を演奏されました。

ピアノソロでは、リスト生誕200年にちなみ、「愛の夢 第3番」と「ラ・カンパネラ」を演奏しましたが、先月のリサイタルでも弾いたばかりなのに、自分の中から曲がスラスラと流れてきません。
弾いていてとても怖いのです。
気にしても解決にならないので、「この状態で出来ることを精一杯やろう」と開き直って弾きました。

その後の桑田さんの伴奏はスムーズにいきました。
ソロもこれくらいのなめらかさ、集中度で弾けると良かったですが、良い状態を会得できただけでも良しとして、次回に生かそうと思います。

Indexのページを新しいウインドウで開く>