'11.12.22
〔セルゲイ・シェプキンさんのリサイタル〕

セルゲイ・シェプキンさんのリサイタルを聴いてきました。

2009年に、バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第2巻」の全曲のリサイタルを聴き、何とも言えない温かさのある音色に魅せられました。
昨年の「展覧会の絵」は聴きに行けず、残念。
待ちに待った今日は、ブラームス「6つの小品  op.118」と、バッハ「ゴルトベルク変奏曲」。
会場は、すみだトリフォニーホールです。


滑り出しは緊張感がありましたが、次第に柔らかな響きに包まれていきました。
ブラームスは特に楽しみにしていましたので、最後の第6番が彼方に沈んでいくように終わった時は、大満足。
休憩時間中に、CDも購入しました。

後半の「ゴルトベルク変奏曲」は、演奏に50分かかる大曲。
同じくこの曲が演奏された、5月・平田真希子さんのリサイタルでは、プログラムノートに「バッハがなぜこの長大な曲を書いたのか、私と一緒に考えて下さい。」と、聴く側にも強い積極性を求めるメッセージが書かれていましたが、書かれた背景を考えずにはいられない、いろいろなことを想像されられる曲です。

でも、「ああ、いいなぁ」と、ただその響きに身をゆだねるだけでもいい・・・今日はそう思いました。
きちんと聴いている方には、怒られてしまうかもしれませんが・・・。
音を慈しむような、シェプキンさんの演奏。
1時間以上かかる演奏でしたが、いつまでもこの響きに浸っていたい、と思いました。


カーネギー・メロン大学、ニューイングランド音楽院でも教鞭をとっていらっしゃる、シェプキンさん。
「学生時代だったら、アメリカまで行って師事したいと思ったかもしれないな・・・」ふとそんなことを思いました。
今こうして、コンサートを楽しめることは幸せです。
次回の来日も楽しみにしたいと思います。

’11.11.27
〔関東学院大学管弦楽団との共演〕

「関東学院大学管弦楽団

 第7回定期演奏会」で、シューマンの「ピアノ協奏曲 イ短調 op.54」を共演させて頂きました。
安東裕躬(ひろみ)先生指揮・関東学院大学管弦楽団さんとは、2008年・グリーグの協奏曲以来、3年ぶりの共演です。

今年は新1年生の入部も多いとのこと、団員さんが増えて、 よりまとまりのあるサウンドになっていました。
ピアノ調律の齋藤雅顕さん(株式会社サウンドウェーブ)も、「前に聴いた時より、すごく良くなっているね!」と、感心していらっしゃいました。

また、団員さん皆が、いつも元気に挨拶をして下さるのです。
きちんと挨拶が出来る、というのは人として大きな美点だと思いますが、とてもすがすがしい気持ちになりました。


このオーケストラは楽器初心者が少なくないのだそうですが、オーケストラの曲が弾けるようになるなんて、いったいどういう練習をしていらっしゃるのでしょうか???
コンサートマスターの矢坂さんも、大学生になってからヴァイオリンを始めたとのことですから、本当に驚きです。
指揮の安東先生は学生さんに、「君達は奇跡を起こしているんだ!」とおっしゃっているそうですが、その通りだと思います。

シューマンのピアノ協奏曲は、大曲である上に、第3楽章の合わせの難しさでも有名な曲。
でも皆さん、きっちりと弾き切っていらして、「ずれるんじゃないか?」などという不安を感じさせません。
これだけ仕上げるのに、どんなに練習を積まれたことだろうと、頭が下がる思いでした。


メインプログラムの、ベートーヴェン「交響曲第7番」は客席で聴きましたが、安東先生の意図する音楽に見事に付いていかれていることに、とても驚き、ますます頭が下がりました。



協奏曲本番では、予想よりも落ち着いて弾くことが出来ました。
触ると壊れてしまいそうな精神状態から、やっと一歩抜けられたように思いました。
演奏しながら「もっと上のレベルにいきたい」と思ったのは、初めてでした。

その場のノリや勢いではとても演奏出来ず、まだ気持ちが開放された状態とは言えません。
これまで通り、1回1回のステージを大切にして、ひたすら「経験値」を上げていくしかありません。
でも、何か少しでも「前進」を感じたのは、とても嬉しかった・・・。
日頃から、「上達には成功体験が欠かせない」と感じていますので、何か手掛かりを感じられたのが、嬉しかったです。



2週間後、記念撮影のお写真が届きました。
コンサートマスター・矢坂さんの直筆のお手紙付きで、またまた感心させられてしまいました。
「学生の姿勢について褒めて頂けるのが、一番嬉しい」とおっしゃる安東先生。
これから第10回、20回と回数を重ねられ、「関東学院大学にオーケストラあり」と言われることを願ってやみません。

’11.11.20
〔パリ管弦楽団の演奏会〕

パーヴォ・ヤルヴィ指揮/パリ管弦楽団の横浜公演を聴いてきました。
ビゼー「交響曲 第1番」
ドビュッシー「狂詩曲 第1番」(クラリネットソロ /パスカル・モラゲス)
ベルリオーズ「幻想交響曲」
というプログラムです。


2曲目のドビュッシー、クラリネットの重要なレパートリーと思いますが、ずっと「今ひとつ重暗くて、つまらない曲・・・」と思っていました。
今日初めて、軽やかで鮮やかな色彩を感じました。
洒脱さと言うのでしょうか、日本人にとっては、一番難しいことのように思います。

3曲目のベルリオーズには、圧倒されました。
オーケストラの演奏、「ただ弾いているだけ」だと楽器が近鳴りしているだけですが、良い演奏だと指揮者の頭上1〜2m辺りに「響きの集まり」のようなものを感じます。
今日は、響きはもちろんのこと、音が生きて動いているような生々しさを感じました。
海外オーケストラばかり贔屓にするわけでなくても、これでは日本人は敵わないかもと、考えさせられてしまいます・・・。


指揮のヤルヴィがインタビューで、
「『幻想交響曲』が、ベートーヴェンの没後6、7年で書かれたと思うと、何と独創的な音楽かと、呆然とする。」と語っていました。
演奏家は、どんなに弾き慣れた曲でも演奏のたびに新たな感動を覚えると思いますが、それをこれだけの音に表現するのは、やはり大変なこと。
こういう凄さを目指したいな・・・
客席でそれこそ呆然としながら、思いました。


アンコールは、ビゼー「子供の遊び」から「ギャロップ」、そしてシベリウス「悲しきワルツ」。
特にシベリウス、批評には「雲のように淡く漂うpp(ピアニシモ)の、透明な叙情と抑制した慟哭」という素晴らしい表現がありましたが、まさにその通り、引き込まれました。


他の日のプログラム、特にメシアンやストラヴィンスキーも聴きたかったな・・・
贅沢な感想です。

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