'12.2.18
〔FMブルー湘南「スカッとスカぴあ」〜コンサートの日のご飯〕

スカぴあメンバーが交代でお送りしているラジオ番組「スカッとスカぴあ(FMブルー湘南 78.5MHz・毎週土曜日10:40〜11:00)」、当番が回ってきました。
今日のタイトルは「コンサートの日のご飯」です。

『これは人によって、本当に様々です。
お肉を食べるとか、チョコレートを食べるとか。
演奏のぴったり3時間前に食べるとか、前の日のお昼にお肉を食べるとか、時間まで決めている人もいます。

百戦錬磨のピアニストでも、やはり本番は一発勝負。
受験生のように験をかつぐ人もいて、カツ丼とか。
「きっと勝つ」という言葉に似ているチョコレートとか。
演奏が上手くいった時に食べたものを、それ以来ずっと食べるようにしている人もいます。

消化にあまり時間のかかるものだと、胃もたれして演奏に差し支えるので、カツ丼を食べるにしても、演奏の直前には食べないです。


緊張して食べられない、という人もいるかもしれませんが、演奏はスポーツと同じく肉体労働。
短い時間なら良くても、2時間かかるコンサートなどでは、体力も集中力ももちませんから、プロのピアニストで、演奏前に何も口にしないという人は、ほとんどいないと思います。


演奏前にきちんと食事しても、コンサート1回で1kg〜2kgくらい体重が減ります。
演奏で使う体力だけでなく、ものすごく集中している時って、脳もすごくエネルギーを使うみたいです。
…なのに、あんまりダイエットにならないのは、コンサートが終わった後にホッとして、食べすぎちゃうからなんですよね…
体力も精神力も消耗したあと、食べてひと安心する、ということもあるかもしれません…


私の場合、年齢とともに色々と移り変わってきました。
学生時代は、演奏前は本当に食べられなくて、演奏後に2人前を一気食いしていました。

卒業してからは、さすがに空きっ腹ではもたなくなって、パンを一つ食べるようになりました。
その後、パンでは足りなくなって、ご飯の方が腹持ちが良いと気づき、おにぎりを買うようになりました。
そして、「おにぎり・チョコレート・お茶・ブラックコーヒー」の「4点セット」を、近くのコンビニで調達するのが定番になりました。

なのに、それでも足りなくなってしまい…
今は普通にお弁当を食べています。
お肉も少し食べたいので、すき焼き弁当とか、ちょっと甘い味付けのものをよく買います。
スタッフの分も一緒に買いに行きます。

どこか外のお店に食べに行く、ということはありません。
お店で流れているBGMを聞き続けていると耳が疲れてしまうので、楽屋で静かに食べています。


ちなみに、スタッフのお弁当ですが、知り合いのピアノ調律師さんの話でびっくりしたことがありました。
「クラシックのコンサートでは、調律師にお弁当は出ない」のだそうです。
他のジャンルのコンサート、ポップスなどではちゃんと出る。

どうしてクラシックだけがそんな事態なのかというと、「予算がないから」ですって。
スタッフの食事は必要経費でしょう?
まして、ピアノ調律師さんはピアニストにとっては命綱ですから、調律が終わっても、リハーサルからコンサートが終わるまで、ずっと舞台袖にスタンバイしていただく必要があります。
なのに、食事を出さないなんて、どういうことか…

コンサートのスタッフって、チケットもぎりや案内係のように、短時間の仕事もありますが、
調律師さんのように、開演5時間前とか6時間前からの仕事もあって、そういうスタッフは当然食事の時間にかかります。

話を聞いた調律師さんは、「ピアニストご本人が、緊張していてほとんど食べないからかもしれません…」とおっしゃっていましたが、本人が食べるか食べないかは本人の都合。
スタッフも同じ、なんてことはないですよね。


クラシックに携わる皆様、これは大変恥ずかしい事態だと思います。
裏方さんあっての本番、きちんとお弁当を出しましょう。


今日の1曲は、ヴィヴァルディの「冬」から、第2楽章です。
春・夏・秋・冬の4曲からなる、ヴィヴァルディの「四季」は日本でもとても人気のある曲ですが、これからお送りする「冬」の第2楽章は、これまた美しいメロディーで、日本語の歌詞をつけて歌われたりもしています。
第1楽章と第3楽章は、しんしんと降り積もる雪や、冷たい吹雪を描写した曲で、寒い時に聴くと更に寒さが増してくるので、今日は暖かな暖炉を思わせる第2楽章をお楽しみいただきたいと思います。』

'12.2.16
〔通し練習〕


3/6(火)予定のリサイタル「グリーグ:抒情小曲集 全曲演奏会 vol.1」、
会場のムジカーザを借りて、通し練習をしてきました。

「ムジカ musica」は「音楽」、「カーサ casa」は「家」。
「ムジカーザ」で「音楽の家」。
その名の通り、住宅街に入ってすぐのところにあるモダンなお宅、といった趣きの外観。
ホールの広さは30畳くらいですが、天井高が5mあり、歩く靴音までもが、何とも深く柔らかく響きます。

また、窓から外が見えるので、昼間と夜とでは雰囲気が違うのです。
以前に試弾で借りた時は昼間でしたが、今回のリサイタルは夜開催なので、雰囲気を知るために夜間の時間帯を借りて、練習しました。

さしこむ光が柔らかな昼間とはまた違い、夜は演奏者とお客様がより親密で、いっそう「ホームコンサート」に近い雰囲気になるように思います。
今回のリサイタルで、トークをするかどうか決めかねていたのですが、この雰囲気を生かしたく、曲名をご案内する程度に、ごく短くお話しすることにしました。


今回使うピアノは、ベーゼンドルファー200。
試弾に行った時から、「グリーグの『抒情小曲集』に合うな」と思っており、リサイタルシリーズにしようと決めたのも、このピアノがあったからこそのことでした。
弾いていると、その雅やかな音色で、ホールの音響とあいまって、別世界に連れて行ってくれる感じです。

プログラム後半は、ドビュッシーを7曲。
音色が豊かなピアノで弾くと、ドビュッシーの色彩の豊かさが一層際立ちます。
ただ、表現が少しでもあいまいだと、途端にぼんやりしただけの音色になる…
良いピアノほど、正直です。
大きなホールで弾く時のような強調は必要なくても、どんな弱音でも、いっそう確信持って弾かないといけません。

今回は、「何かを深く考えさせられる曲」というのはありません。
くつろいだ空間で、心穏やかに聴いていただけるよう、響き具合やペダルのコントロールを工夫しながら練習しました。


翌日、録音を確認。
プログラム前半のグリーグ「抒情小曲集 第1集&第2集」は、「アリエッタ」や「子守歌」など「歌もの」は良いのですが、
「妖精の踊り」「跳びはね踊り」など「踊りもの」が、やや物足りない…
まだ、メロディーで音楽を進めすぎていました。
もっと伴奏部分の単独練習を詰めなければ。

ドビュッシーの作品は、テンポの揺れにも逐一指示があり、納得し切れていないところもありました。
でも今回やっと、すべての指示が必要なことだと、納得出来ました。
大胆な所は思い切りよく大胆に。小さなホールでも、表現が縮こまった感じにならないように、気をつけたいと思います。


ホールで通し練習をする時は、それまでに一度気持ちを本番状態に持って行くので、終わった後も、本番後と同じくらい疲れます。
でも、ここでまた気持ちを仕切り直さないといけません。
今回見えてきたことを大切に、あとの準備を詰めていこうと思います。

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