2012.10.14. 【リサイタル@藤沢 vol.7 〜風の響き 水の響き】

藤沢リラホールで、7回目となるリサイタルを開催しました。
今回は「風の響き 水の響き」と題し、生誕150年を迎えたドビュッシーの作品を中心に、
「風」にちなんだ曲と、「水」にちなんだ曲を組み合わせたプログラムです。

《風の響き》
ショパン「練習曲 op.25-1 “エオリアン・ハープ”」
グリーグ「風の精」
パルムグレン「とんぼ」
リスト「森のざわめき」
ドビュッシー「帆」「野を渡る風」「西風の見たもの」
ヘンリー・カウエル「エオリアン・ハープ」

《水の響き》
ドビュッシー「水の反映」「雨の庭」「霧」「水の精」
セヴラック「ショパンの泉」
ドビュッシー「沈める寺」


カウエル「エオリアン・ハープ」は内部奏法の曲で、ピアノの弦を直接指でなでたり、はじいたりして、まさにハープのような奏法で演奏します。
数年前にテレビで聴いて、ちょっと古風で懐かしさも感じる響きに魅了され、ずっと楽譜を探していた曲です。

鍵盤を弾くよりもずっと音量が小さい奏法なので、大きなホールや響きの悪いホールでは難しく、小規模で音響の良い藤沢リラホールは、まさに理想的な空間。
ただ、内部奏法は、弦の間にボルトなどの金属をはさんだり、木槌で弦を叩いたりと、部品を傷つけるような手法もあり、国内のほとんどのホールで禁止されています。

藤沢リラホールでも、原則として禁止です。
今回は事前にホールに相談し、「弦をなでる・はじくのみ。他の部品に触れないこと」「調律師が立ち会うこと」という条件で、ご許可いただきました。


この「エオリアン・ハープ」は、アンケートの「印象に残った曲」でダントツ1位。
今回、この曲を弾くために「風の響き」というプログラムを思いつきましたので、喜んでいただけて嬉しかったです。

全体にお客様の反応は、かなり良かったと思います。
集中して聴いて下さるお客様の雰囲気に、精神的にとても助けられました。
アンケートも、これまで以上にお褒めの言葉を多くいただき、とても有難く思いました。


後日、録画したビデオも確認。
全体の流れはうまくいったように思いました。
ただ、落ち着いて進めたつもりが、客観的に聴くと「ちょっと早口かな」と感じるところがあります。
自分では「乗って」弾いているつもりが、上滑りしているだけだったり…


バリバリっと弾き切る演奏、リズムのキレをアピールする演奏に、つい憧れてしまうのですが、無い物ねだりばかりしていると、やはり本当に磨くべきところを見失うようです。
ひそやかに弾くところは、もっとていねいに。
柔らかい音や静かな音は、もっと変化をつけていかなくてはなりません。


また、「沈める寺」や、アンコールに弾いた「アラベスク 第1番」や「月の光」など、演奏回数の多い曲は、かなり安定して聴こえました。
今年は「レパートリー(持ち曲)」について考えさせられることが多くなりましたが、そういう曲をもっと増やしていきたいです。

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今回は、チケットの売り上げが、とても伸び悩みました。
販売が好調な時は練習のモチベーションも上がりますが、そうでない時は辛いもの。
「何事も山あり谷あり」と分かっていても、気持ちを前向きに持ち続けるのは大変でした。


プログラム曲が、今ひとつ馴染み薄かったのか…
前回のアンケートで、「ドビュッシー作品で聴きたい曲」のリクエスト項目を設けたところ、
第1位は「月の光」、2位は「アラベスク」でした。

第3位は、「ドビュッシーの曲なら何でも」という回答。
ここで、「藤沢のお客様はドビュッシーにも詳しい」と思ってしまったのは事実です。
「前奏曲集」や「映像」「版画」もリクエスト上位に入っており、
「ドビュッシーの名曲」に「ちょっと珍しい曲(カウエルやセヴラックなど)」を添えたプログラムにしたつもりでしたが、
「知らない曲ばかりのコンサートは、ちょっとね…」などという声も聞きました。


「月の光」と「アラベスク」は、2曲ともアンコールで必ず演奏する、と決めていましたが、
結果的に、リクエストの1位&2位を無視したチラシになってしまいました。


それに、10月に「風」「水」のテーマは、季節外れだったかもしれません。
宣伝時期が8月〜9月の暑い時期なのでちょうど良いかと思いましたが、10月に入って一気に涼しくなり、朝夕冷えるようになりましたので、甘かったと思います。


ホールの方は、「曲目が、というよりも、世の中が冷えていて、コンサートなど全体のお客様が減っているように思う」とおっしゃっていました。
娯楽にお金を使いにくい空気が広がっている中、映画より単価の高いコンサートが敬遠されてしまうのは否めません。
多くのコンサートがそういう状態だと、慰めて下さったのかもしれません。

でも「仕方ない」と甘える気持ちでいたくはありませんし、何よりお客様を集められているコンサートも、ちゃんとあるのです。
もっとお客様が、チラシや広告を見た時点で幸せな気持ちになれるような企画、精神的に充実感を持てる内容にしていかなければ、と強く思います。

毎年開催してきた藤沢リラホールでのリサイタルですが、来年も開催出来るかどうか…今は未知数です。
でも「ピンチはチャンス」。
「上に伸びることができない時は、下に根を張りなさい」という言葉もあります。
苦しい中を本番まで頑張れたことも励みにし、次回のリサイタルを目標に精進していきたいと思います。

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