2013.4/14 【リサイタル「ピアノ名曲コンサート vol.8」】

お客様からのリクエスト曲で構成するリサイタル「ピアノ名曲コンサート」第8回目を開催しました。
会場はヨコスカ・ベイサイド・ポケットです。


今回は、リクエスト曲49曲・作曲者名14人の中から、「苦悩から希望へ」をテーマに、
苦しみの中で書かれた曲や、新しいことのきっかけになった曲、希望を感じられる曲を9曲選びました。
隠れた名作を1曲ご紹介する「自己選択曲」として、シマノフスキの「練習曲」を入れ、
合計10曲のプログラムです。


バッハ「主よ人の望みの喜びよ」
シューベルト「即興曲 op.142-3 “ロザムンデ変奏曲”」・・・病の中で作曲
ベートーヴェン「悲愴ソナタ」・・・耳の病の苦しみ

ショパン「夜想曲 遺作」・・・故郷からの旅立ち
ショパン「革命」
ショパン「別れの曲」「黒鍵」・・・安定した音楽活動の始まり
シマノフスキ「練習曲 op.4-3」・・・「若きポーランド」最初のコンサートで披露された曲
リスト「エステ荘の噴水」・・・精神の病
リスト「ラ・カンパネラ」・・・楽器の新たな可能性

「悲愴ソナタ」や「ラ・カンパネラ」の後、「ブラボー」が出たのは、とても嬉しかったです。


一昨年の震災以来、お客様の数は半分近くに減ってしまいました。
当時の自粛ムードこそなくとも、不景気や不安な社会情勢続きで、
お金を使うところがますます絞られている感じを受けます。

内容(曲目)についても、考えすぎてしまったのかもしれません。
4月のコンサートというと、どうしても震災関連のニュースが多い中で宣伝をしていくことになります。
明るい雰囲気の内容だと、不謹慎な印象を持たれてしまうかな…と不安になり、
癒される曲や、苦悩を克服していったようなストーリーのある曲を選んでみようと考えました。

また、昨年秋・藤沢リラホールのリサイタルで、あまりお客様になじみのない曲を並べてしまった反省もあり、
曲目を見て安心感を持っていただけるような、やや保守的なプログラムになりました。


でも、「苦悩から希望へ」というテーマは、今思うと、少し重い印象だったかもしれません。
決して震災のことを忘れているわけではないけれど、
人々の気持ちが、明るい話題や、ウキウキするようなものを求める方向に、変化しているのかもしれません。
なじみのある曲も良いけれど、変化に乏しい印象を与えてしまったのかもしれません。

リクエスト曲の中から、1年かけて準備する…
1年後の社会情勢を予測して動く難しさを、今更ながらに感じました。

このリサイタルでは、指定席と自由席を設けています。
自由席の売れ行きは芳しくありませんでしたが、指定席はとても好調で、完売となりました。
本当に聴きたいと思って下さるお客様は、今でもいらっしゃると、気持ちの支えになりました。
以前は、いわゆる“バブル”だった…
1から出直すつもりでやっていこう…
そう思えるようになりました。

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2月の初め頃、リサイタル実行委員会に、お客様からお問合せがありました。
横須賀芸術劇場のホームページをご覧になったというお客様で、
「今回の曲目に、ドビュッシーの『沈める寺』は入っていますか?」というお問合せでした。

「沈める寺」は、ドビュッシー生誕150年だった昨年のプログラム最後に演奏したこともあり、
今回は入れていませんでした。
既にチラシも出来上がってしまっていたため、お詫びしたところ、そのお客様は、
「アンコールにでも良いので、ぜひ『沈める寺』を弾いてもらえませんか。
あの曲は、高橋さんの良いところが一番出る曲だと思う。
回を重ねるたびに良くなっている。」
とおっしゃいました。

また、「味のあるピアニストに成長していってほしい。」というお励ましも下さいました。

本当に、本当に嬉しいことでした。
お好きな曲をリクエスト下さるのはもちろん嬉しく、「名曲コンサート」の趣旨でもありますが、
良いところを見て下さり、長い目で見守って下さるお客様がいらしたことを、とても嬉しく思いました。

このことを演奏後にお話しさせていただき、「沈める寺」をアンコールに演奏しました。


より早く、より若く、という流れは日本の音楽界にもありますが、
じっくりと時間をかけることで育っていくものもあると思います。
時代の流れも大事ですが、芸術を極めていく以上、自分の裡にあるものを、もっと大切にしていこう…
改めてそう思うことが出来ました。

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このリサイタルではナレーションで曲の説明がつきますので、
これまで私はステージで何も話さずにやってきました。
今回初めて、アンコール前にお話しをさせていただきましたが、
とても親しみやすい雰囲気になったようで、好評をいただきました。

また、自分で話しながら進めるコンサートが多くなっているせいか、
開演中に何も話さないことに、私自身、初めて違和感を感じたのです。

伊礼清子さんの温かみがあって素晴らしいナレーションは、今後もお願いしていきたいし、
ナレーション→演奏の流れ・タイミングも、このリサイタルでしか出来ないやり方です。
これはそのまま維持し、たとえば始める時にも簡単なご挨拶を入れるとか、次回は何か工夫していきたいと思います。


曲のセレクトでも、リクエスト曲から選ぶというスタイルは変えずに、
メロディーを聴けばすぐ分かる超有名曲にこだわらないとか、
クラシックから多少外れるジャンルも考慮に入れるとか。
(映画音楽などのリクエストもあるのです)
8回目を終えて、過渡期を迎えたのかもしれません。


今回のお客様からのリクエスト曲は、前回の倍以上、112曲も集まりました。
リクエスト曲は、全て一通り弾いてみることにしています。
それまであまり関心のなかった曲に、思わぬ魅力を発見することも多く、
リクエストを募る最大の目的でもあります。

これまでで最も多い数のリクエストをいただき、全て弾いてみるのに1ヶ月以上はかかりそうです。
新たな発見との出会いが、とても楽しみです。

「スカぴあ 2013」ナビゲーターの田中井祐子さんが、感想を書いて下さいました。
「スカぴあのブログ」で、ぜひご覧下さい。

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