2013.10.25/11.2【伴奏の仕事】


毎年恒例のイベントで伴奏をしてきました。
2回ともステージリハーサルの出来ない会で、いつもハラハラしてしまうのですが、
今回もやはり…

1日目の会場。
昨年は椅子の高さを変えるレバーがサビついて動かず、不安定な姿勢で弾く羽目になってしまったので、今年は前もって椅子を確認しました。
やはりレバーがサビついていたので、後で別室のピアノ椅子を運んでもらって使うことにしました。

しかし、本番で弾き始めたところ、ダンパーペダル(右のペダル)の動きが不十分で、半分くらいしか動きません。
ピアニストにとって、ダンパーペダルは呼吸と同じようなものなので、
これでは半分しか息が出来ない状態で歌っているようなものです。

30分の演奏時間。
最後の5分くらいで、ようやくピアノ自体が鳴ってきて、
わずかながらもペダルの不足を補うことが出来ました。

次回は事前にしっかりお願いして、2〜3分で良いからきちんと椅子に腰かけ、
音を出して確認する時間をいただかなければと痛感しました。
ピアノや椅子の状態を前もって把握出来れば、具合の悪い所を直すことは出来なくても、
弾き方を工夫するなど、何らかの対処が出来る可能性があります。
演奏中に対処出来ることはやはりわずかですし、そういうことで音楽への集中力を削がれたくないものです。


2日目は出演者の多い、2日間・4部構成のイベントでの伴奏。
音出し室から舞台袖への移動も分刻みで決められており、
ステージ上でピアノや椅子を確認することは、一切出来ません。

音出し室のピアノは、木目でとても素敵なピアノなのですが、
残念ながらとても音程が下がっていました。
昨年はここまで下がっていなかったので、最初の音で驚き、あわててしまいました。

不本意なリハーサルから、何となくそのまま不安定な気持ちのままステージに出てしまい、
思うように弾けなかったところがありました…
リハーサルで何があろうとも、しっかり気持ちを切り替えなければならないのに、反省しました。


毎年参加させていただいているイベント、ピアノやステージの状態が万全でないことは分かっていたはずです。
なのに、演奏には万全を課してしまい、
良い意味での「そこそこ」、良い意味での「手加減」が出来なかったのが、いけなかったのかもしれません。

次回の課題は「もっと心に余裕を」かな…


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2013.10.19 【小山実稚恵 グランドコンサートシリーズ】

「横浜市栄区民文化センター リリス」の開館15周年記念企画・「小山実稚恵 グランドコンサートシリーズ」を聴いてきました。
3回シリーズの2回目、今日は弦楽四重奏との共演で、ショパン「ピアノ協奏曲 No.1」とシューマン「ピアノ五重奏曲」です。

ピアノソロ曲のみだった1回目に比べ、男性のお客様が多い印象です。


ショパンの室内楽版協奏曲は、いつかリサイタルでとりあげたいと思っている曲です。
原曲(フルオーケストラとの共演)の演奏は経験がありますが、室内楽版を聴くのは初めて。
室内楽版は物足りない、という意見も聞いていましたので、
実際に聴いて確かめたいと思っていました。

常設の弦楽四重奏団として話題の実力派、クアルテット・エクセルシオの演奏も大いに楽しみ。
ショパン作品ではコントラバスの渡邉玲雄さんも加わっての演奏でした。

コントラバスを加えた「ピアノ六重奏」での演奏は、大正解だと思いました。
五重奏だとコントラバスのパートがまるまる抜けてしまうわけで、
響きの豊かさが全く違ってしまいます。

集中力に満ちた演奏に支えられて、物足りなさはほとんど感じませんでした。
もっとも客席数300のホールだから可能だったことで、
1,000席を超えるような大ホールでは、やはり難しいかもしれません。

ショパンの時代は、協奏曲をピアノ伴奏や室内楽伴奏で演奏することが多かったそうで、
オーケストラを調達する資金がない時に重宝したそうですが、
当時の演奏会場が現在よりずっと小さかったことも要因ではないかと思いました。


後半のシューマンも、各パートの連携が緊密で緊張感がキープされ、
要所要所のハーモニーも美しく、充実した演奏を聴くことが出来ました。
アンコールは再びコントラバスも加わり、ショパンの「ピアノ協奏曲 No.2」第2楽章でした。

ステージの配置について。
協奏曲の時も、通常のピアノ入り室内楽曲と同じく、ピアノは弦楽器群の後ろに配置されていました。
そのためかピアノの音が遠く感じ、
ピアノ協奏曲というよりは、「ピアノの音数が多い室内楽曲」という印象でした。
協奏曲には、ある種の華やかさを期待してしまうものですので、そこは物足りなく感じました。


プログラム後半にシューマンの五重奏曲があり、
そこではピアノを後ろに配置するから、この配置で演奏しているのかと思いましたが、
配置換えは休憩時間中に出来るはず。
音量のバランスを考慮してのことだったのかもしれませんが、やや心残りでした。

リリスホールは、ステージが一番低い位置にあり、
階段状の客席からステージを見下ろす構造になっています。
客席が低くステージを見上げる構造のホールより、音が聴こえやすいように感じます。
パートの絡み合いも楽しみたいピアノや室内楽を聴くには、最適の環境だと思いました。

クアルテット・エクセルシオの公演が来年4月に予定されているそうで、ぜひ聴きたいと思いましたが、
自分のリサイタルの通し練習日と重なっていて、残念。
次の機会を楽しみに待ちたいと思います。

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良い演奏であれば、楽器や会場の良し悪しは関係ない、という意見もあるかもしれませんが、
コンサートは演奏者だけで成り立っているものではありません。
会場の雰囲気、客席の雰囲気、楽器の状態、様々な要因が重なり合っています。

特にクラシック音楽はめったにPAを使いませんから、会場の音響の良さも大切です。
楽器も、自分の楽器を持ち運べないピアニストは、今日はどんなピアノかと毎回ナーバスになるものです。

リリスホールは、それらの条件をクリアしていて、演奏者にとっても聴衆にとっても良いホールだと感じました。
ここでリサイタルが出来たら良いなと思いますが、区民文化センターという公の施設ですので、
ホール主催や区民主催公演の宣伝が優先され、
貸館公演の宣伝はほとんどしてもらえないのが現実です。
チケットの販売にも、何かと制限があります。

内容の良い公演なら、地元(区民)にも利点があるわけですし、
追加手数料がかかっても良いから、区民主催同様のサービスがあると良いのですが・・・

素晴らしいホールなだけに、残念な気持ちになりました。


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