2015.3.1【リサイタル グリーグ:抒情小曲集 全曲演奏会 vol.4】


10集66曲から成るグリーグの「抒情小曲集」を、
2集ずつ5回に渡ってお送りするリサイタルシリーズ。
今日で4回目を迎えました。

プログラム前半は、グリーグの「抒情小曲集 第7集 op.62」と「第8集 op.65」。
各6曲で、合計12曲です。

後半には、今年生誕150年のシベリウスの作品から、
「5つの小品(花の組曲) op.85」
「即興曲 第5番 op.5-5」
「ロマンティックな情景 op.101-5」
「5つの小品(樹の組曲) op.75」を演奏。
2つの組曲の間に、若い時の曲と、創作の晩年になってからの曲を1曲ずつ挟みました。


このリサイタルシリーズは、曲目こそ地味ですが、私にとって、かなり挑戦的な内容です。
「音色の美しさや、表現の丁寧さを追求したい」と考えて会場を選び、曲目を選んでいきました。
ピアノは、音に温かみのあるベーゼンドルファーを使っています。

今回も初めてリサイタルに出す曲が多く、半端でないプレッシャーがありました。
経験豊かな演奏家でも、やはり初めての曲はとても緊張するそうで、
暗譜を強いられるピアニストは尚のことです・・・


今回は特に、短い曲をたくさん弾くプログラムでしたので、
通し練習も積んで、集中切れを起こしやすい所をしっかりつぶしていくよう、準備を重ねてきました。

まだまだ失敗を恐れる気持ちが大きいようで、それが消耗の原因だと思います。
音楽の流れは途切れさせませんでしたが、反省です。


第1回からご来場下さっている井上二葉先生は、
「これまでで一番良かった」と言って下さいました。

お客様の反応も、アンケートのご回答も含めておおむね良く、
わずかながらも達成感を味わうことが出来ました。

このところ、どういうわけか終わっても達成感がなく、
徒労感ばかりに襲われて困っていましたが、
「どの曲も心のこもった演奏」
「vol.1〜vol.3まで行けなかったのが、とても残念」
などのご感想に、とても励まされました。


次回は来年2016年3月6日(日)。いよいよ最終回です。
曲目は、「抒情小曲集」の「第9集」と「第10集」、
グリーグ唯一の「ピアノソナタ」、晩年の傑作「スロッテル(抜粋)」と、
オール・グリーグ・プログラムとなります。

初めた当初、5年後はいったいどうなっているのか、自分は成長出来ているのか、
全く想像がつきませんでした。
4回目を終えた今、
「少しは成長したよ」「少しは強くなったよ」
と、当時の自分に言ってやりたいように感じています。

ある本に、「きつい仕事ほど、力を与えてくれる」とありました。
「仕事がきつい時は、過去のきつい仕事が自分をどんな風に変えてくれたかを、思い出すようにしている」
とのこと。
そう考えると、がんばれそうですね。


最終回までの日々、またきっと色々なことがあるでしょう。
でも、きっと乗り越えられる・・・
そう思えるようになっただけでも、有難いことだと感じています。
また1曲1曲、1日1日、練習を重ねていきたいと思います。

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2015.2.15【大内孝夫・著「『音大卒』は武器になる」】

元銀行員で、現在は武蔵野音楽大学の就職課で就職指導にあたっていらっしゃる大内孝夫さんの「『音大卒』は武器になる」。
今年2月に出版されたばかりですが、既に第2刷。
楽器店などの音楽書コーナーでも、話題の本です。

音大生の進路について書かれた本は、これまでにもありましたが、
音楽に関わる職業についてしか、取り上げられていませんでした。
この本は、「一般就職を目指せ」と銘打つ、画期的な書です。


本の前半は、「音大卒を武器にする」。
本のタイトルと似た言葉ですが、音楽を専門に学んだ学生の長所が具体的に挙げられ、
「音大生こそ就職を目指せ」
と力説されています。

後半では、「実践編/音大生の就職マニュアル」として、
エントリーシートや履歴書の書き方、インターンシップ、
筆記試験や面接の受け方に至るまで、実際の就職活動にあたって必要なことを網羅。
一般大学の学生にとっては当たり前の内容でも
音大生に特化して書かれた書、という点で、これまた画期的です。

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物心つく前から、時間もお金も音楽にかけてきた音大生。
スポーツで言えば、それこそオリンピック選手を目指してやってきたようなものではないでしょうか。

この本には、「音楽以外の道を選択するのは、決して挫折ではない」とありますが、
そう割り切れない気持ちも分かります。
親や周囲の期待を背負っている人も、少なくないでしょう。

でも、自分の人生。
「これまで音楽関係以外の道がなかったのが、その能力を社会で発揮出来る時代になった。
自分の立ち位置を確認し、音楽だけで生計を立てることが難しそうなら、
これまでに育んだスキル・能力を活かした職業につく、という道も考えていただければ。
ぜひ時代の変化をチャンスとして、うまく活かしていただきたい」
と説く内容には、心打たれるものがありました。

音大生にとって、音楽以外の道も選択出来る、という後押しは、
実はとても心強いのではないでしょうか。

前半の終わりには、「それでも音楽をやりたい人へ」という章も設けられています。


音楽もスポーツのように「セカンドステージ」について考えさせることが必要に思います。
これらが功を奏し、「音大に行くと、ツブシがきかなくなる」などという偏見がなくなれば、
音大で学ぼうという学生も増えるかもしれません。
生徒減に悩む多くの音大にとっても、良いことではないかと思います。

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母校にも、2014年4月に「キャリア支援センター」なる部署が出来、
進路に関する相談や、情報提供が受けられるようになりました。
卒業生の進路についても、その大半が「進学」ではあるものの、きちんと公表されるようになりました。

他の音大に比べ、あまりにも遅れをとってしまった上に、
まだ決して十分とは思えない内容ですが、
こういう部署が出来ただけでも、大きな進歩でしょう。


卒業生が音楽に固執せざるを得なかった時代とは変わりました。
「これからの時代は、音大生も自立に向けた取り組みをしっかり行い、
学校もそれをサポートする体制作りが必要」
という箇所には、深く納得しました。

音大生や受験生はもちろん、保護者と先生に特にお勧めしたい本です。

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