2015.8.12【ホキ美術館】

写実絵画専門の美術館として2010年11月に開館した、千葉市のホキ美術館に行ってきました。

歴史に写真が登場してから、「本物そっくりに描く」という行為は下火になっていったと思っていました。
どちらかというとキワモノ的なジャンルなのかなと思っていましたが、
写実絵画のスゴさを一度生で見てたいと、ずっと気になっていた美術館です。


「写実って何だろう? その多様性と可能性」という企画展の54点、
他に常設の100点以上を見ることが出来ました。

採り上げられているテーマは実に様々。
人物一つとっても、ただ「本物そっくりですごい!」ではとても収まり切らない、
多岐に渡る作者の狙いや想いが伝わってくるようでした。

特に人物画の肌の表現。
人の皮膚は、人種に限らず半透明なのだそうですが、
その半透明な皮膚の下にある組織、そのぬくもりまで踏まえた表現は、本当に美しいものでした。

風景画には、見ながら描いたのではなく、画家が自分の中で熟成させてから描き始めたという作品がありました。
写真などの記録はとっておくのだと思いますが、
見た印象を思い出しながら、しかもそれを写実で描くというのはとても興味深い手法で、
表現の多様さを感じました。

この美術館は、所蔵作品のほとんどが、現役の作家によるものだそうです。
本来の価値とは違うところで値段ばかりがつり上がっていく美術品を見聞きする中、
現役作家の作品をきちんと展示する姿勢に、共感しました。


今日はお盆期間ということもあってか、比較的空いていたようで、
ゆったりと落ち着いた気分で展示を見ることが出来ました。
混んでいて入れないかな、と思っていた併設の素敵なレストランで食事も出来て、大満足な一日となりました。

建物そのものもとても美しく、外観から床の素材、照明に至る工夫の数々、
建設に携わった方の名前が列挙されたガラス板など、素敵なこだわりがたくさん。
(それらの説明が載った、手書きのパンフレットが可愛らしかったです)
また訪れてみたい美術館です。


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2015.8.7【フェスタサマーミューザKAWASAKI/日本フィルハーモニー交響楽団】

今年も出かけた「フェスタサマーミューザKAWASAKI」。
公開リハーサルやプレトーク、プレコンサートなどのイベントも楽しいフェスティバルですが、
今回は、ピアノ協奏曲が演奏され、加えて公開リハーサルもある公演の中から、
日本フィルハーモニー交響楽団を聴いてきました。

「世界音楽紀行 北欧ノルウェーフィンランド」と題されたプログラムは、
グリーグ「ピアノ協奏曲」と、シベリウス「交響曲第2番」。
指揮は小林研一郎さん、ピアノは上原彩子さんと豪華な顔ぶれで、期待が高まります。


ステージでのリハーサルは、会場の響きを確認する程度だと思っていましたが、
小林研一郎さんは、かなりの部分に、イメージを喚起するような指示を出していました。
その言葉にオーケストラが反応して、音色が生き生きとしてくるのを目の当たりにすると、
豊かなイメージを持って音を出すことの大切さを痛感します。

上原彩子さんのピアノは、音の響きに対する感性が非常に洗練されていて、弱音の音色の変化も豊か。
デリケートなものが何層にも重なったような、不思議な透明感を感じました。
そして風格もあって、さすがと感じさせるものでした。
他の曲の演奏も、ぜひ聴いてみたいです。

シベリウスの交響曲は、ポピュラーな第2番と言えども、楽想のつながりがあまりにも連綿としていて、退屈になってしまいがちです。
でも今日の演奏は、指揮者の表現力がオーケストラを牽引し、集中力が十分に維持された、聴き応えのあるものでした。
アンケートに、「コバケンのコンサートは、いつも胸がジンとする」という感想があったそうですが、
本当にその通りだと思います。


アンコール曲は以外にも、北欧とは特に関連のないドヴォルザークの「ユーモレスク」。
小林研一郎さんから、
「始めは子供時代、次のロマンティックなメロディーは青春時代、
そして辛い経験も経て、また人生の終わりになって、始めのメロディーが戻ってくる」
という内容のお話があり、とても新鮮な気持ちでこの曲を聴くことが出来ました。


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今回、聴衆のいないリハーサル時と、本番とで、音の響きがどのくらい変わってしまうのか、
それを比較・確認したいと思っていました。
リハーサルの公開は、他ではめったにありませんので、このフェスティバルは貴重です。

公開リハーサル時は自由席なので、1階席で聴いている方がほとんどでした。
でも今日は、本番と同じ席で聴かないと意味がないので、3階正面の席へ。

結論は・・・やはり本番では、布一枚越しに聴いている感じではありました。
音量というよりも、倍音の響きが減ってしまうのだな・・・という印象を受けました。
リハーサルで感じたコントラバスから伝わるステージ床の振動も、本番ではなくなっていました。
聴衆が厚着をしている冬だったら、もっと変わってしまうのかもしれません。

11月に横須賀で、モーツァルトのピアノ協奏曲を弾く予定ですが、
今日の感想を踏まえ、音の通りを良くする手や身体の使い方、
そして何より力まないことを心がけて、練習を積んでいきたいと思います。

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