2016.2.11【小林武史 ヴァイオリンリサイタル/日本グリーグ協会 モーツァルトvsグリーグ】

今日は2つのコンサートに出かけました。
小林武史さんのヴァイオリンリサイタルと、日本グリーグ協会主催コンサートです。

小林武史さんのヴァイオリンリサイタルは、銀座の王子ホール。
ピアノは野平一郎さんです。

團伊玖磨「ファンタジア 第1番」
夏田鐘甲「3つのバラード」
野平一郎「伝説の時」(「デュオ・コンチェルタンテ」の第3楽章を独立させた曲)
・・・以上3曲は全て、小林武史さんのために書かれた作品だそうです。

マニャール「ヴァイオリンソナタ ト長調」
・・・1865年生まれ(シベリウスと同年)のフランスの作曲家。
このソナタは、1993年に小林武史さん・野平一郎さんによって初演されました。

 

今日は、小林さんの85歳のお誕生日でもあったそうです。
昨年に腰を痛められたため、今日は椅子に腰かけての演奏でした。

18歳で日本音楽コンクール第1位となり、
以来67年に渡って演奏活動を続けてこられた小林さん。
年齢のことばかりが注目されがちですが、
ストイックでプレッシャーのかかるソリストとしての生活は、
若い世代でも大きなストレスがかかります。

定年もゴールもない、芸術の世界。
長く続けるには、体力はもちろん、
並の人間には想像もつかない精神力が要るのではないでしょうか。

それを経てこられた小林さんの演奏は、音そのものになんとも言えないオーラがあるようでした。
淀みも迷いもない、芯の太い音楽造りも健在で、大樹のような印象を受けました。

また、演奏活動を長く続けられたのは、それだけお客様を大切にされてきたわけで、
客席はとても温かな雰囲気。
アンコール曲の前に、野平一郎さんが「ハッピーバースデー」の演奏を始め、
客席全体で大合唱という一幕もありました。
(どうやら、サプライズだったようです。)

 

野平さんのピアノは、いつもながらに丸みのある音色。
叩きつけるような音は一切ないのに、輪郭がはっきりした演奏は見事で、
小林さんのヴァイオリンをしっかり支えている印象を強く受けました。
夏田作品での雅楽器のような音や、
マニャールでの美しい粒のようなパッセージも素敵でした。

王子ホールの美しいたたずまいとともに、
演奏家の志の高さが心に残るリサイタルでした。

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夕方からは、すみだトリフォニー小ホールへ。
「モーツァルトvsグリーグ  〜知られざる2台ピアノの競演」と題された、日本グリーグ協会主催のコンサート。
モーツァルトのピアノソナタに、グリーグが何と第2ピアノ版を作曲した編作シリーズの全曲演奏会です。

モーツァルトのオリジナルに続けて、グリーグ作の2台バージョンを演奏するという意欲的な内容で、
時間も3時間あまりに渡りました。

ピアノソナタ K.283 ト長調
ピアノソナタ K.457 ハ短調

幻想曲 K.475 ハ短調

ピアノソナタ K.533/494 ヘ長調(第3楽章だけ、違う作品番号になっています)
ピアノソナタ K.545 ハ長調(有名な「やさしいソナタ」)

 

他の音楽にインスピレーションを得て編曲したり、
そのテーマをもとに曲を書いたりするのはよくあることですが、
グリーグのこの編作は、第1ピアノは基本的にモーツァルトのオリジナルそのままで編曲せず、
それに第2ピアノを足す作りになっています。
作曲当時から、完璧なモーツァルトの作品に余計なものを足したと賛否両論あったそうです。

でもその音楽は、決して余計なものを足したのではなく、
聴いていて心地よいものになっていました。
プログラムのご挨拶文にもありましたが、
バッハの前奏曲にグノーがメロディーを乗せた「アヴェ・マリア」が愛されているように、
このグリーグの編作も、リヒテルやアルゲリッチなど多くの巨匠達が演奏していて、
決して軽視されていません。

 

今日のコンサートでは、ソロと2台バージョンの第1ピアノを、
同じピアニストが弾く場合と、違うピアニストが弾くものとがありました。
同じピアニストである方が、2台になった時の面白さや、
表現が変わることなどに集中して聴きやすいと思いますが、
2回演奏するピアニストにとっては、やはり大変なことですよね・・・

出演されたピアニストは10人。
それぞれの個性の聴き比べ感もあり、長時間でも楽しめました。
特に、「やさしいソナタ」のソロバージョンを演奏された坂本真由美さん(東京藝大講師)の、
美しい音色と生き生きしたフレーズ造りが、印象に残りました。

 

今回、私もお誘いをいただいていたのですが、来月のリサイタルと時期が近いこともあり、
残念ながら参加出来ませんでした。
客席で全曲を聴けて、とても楽しい作品だと改めて思いましたので、
いつか弾けたら嬉しいです。

 

グリーグ協会さんによる意欲的な内容のコンサート。
これからも楽しみです。

 

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2016.2.7【荘村清志 ギターリサイタル】


荘村清志さんのリサイタルを聴いてきました。
逗子文化プラザホール主催の「音の世界旅行〜スペイン」と題されたプログラム。
音響の良いなぎさホールは、アコースティックギターを聴くのにぴったりですね。

マテオ・アルベニス「ソナタ ホ長調」
ソル「魔笛の主題による変奏曲」
グラナドス「アンダルーサ」
イサーク・アルベニス「入り江のざわめき」「アストゥリーアス」
マラツ「スペイン・セレナーデ」

タレルガ「アルハンブラの思い出」
ルイス-ピポ「歌と舞曲  第1番」

さらに、ソプラノの小林沙羅さんを迎えて、
武満徹「翼」「小さな空」
ロドリーゴ「4つの愛のマドリガル」
ファリャ「7つのスペイン民謡」

今年は武満徹の没後20年。
荘村さんは、プログラムに武満作品を入れるようにされているそうです。

グラナドスやイサーク・アルベニスの曲はピアノソロがオリジナルで、
私もとても好きな曲です。
それに、これまた大好きなファリャのスペイン民謡も聴けるなんて、とても贅沢なプログラムです。

アンコールには、再び武満徹の歌曲で「めぐり合い」。
そしてギターソロで、おなじみの「禁じられた遊び」が演奏されました。

 

アコースティックギターの音量は、ピアノソロと比べてもずっと小さなものです。
その限られた音量の中で、大きさの細かな差はもちろんのこと、
音色、間の取り方、陰影が実に様々。
こんな響きも造り出せるのかと、改めて感じ入りました。
客席全体が、その多彩な音楽にじっと聴き入っているのを感じました。

プログラム後半にゲストとして出演された小林沙羅さんは、
オペラで大活躍中の素晴らしいソプラノ。
身体全体、まるで背中からも声が出ているような豊かな響きに、これまた聴き入りました。
オペラ仕込みの表現力も見事でした。

 

配布されたプログラムには、曲名と演奏者プロフィール、他のコンサート情報が載っていただけで、
曲の解説のようなものはありませんでした。
最近、このようなプログラムをよく見かけるようになりました。

演奏者がお話をしながら進めるコンサートが珍しくなくなったため、
プログラムに解説は不要と判断されたのかもしれません。

しかし、ロドリーゴとファリャの内容については、お話でも特に触れられていませんでしたし、
せっかくの表現力豊かな小林さんのソプラノ、
特にスペイン語の歌は、歌詞の意味がプログラムに載っていた方が、
より深く味わえるのではないかと感じました。

対訳では著作権の問題があるなら、要約でも十分かと思いますが・・・
ついつい余計なことを考えてしまいました。

 

帰り道に「また何かコンサートを聴きたいな」と感じたのは久しぶりです。
良い音楽は、癒しや元気づけなど、心にプラスのエネルギーを与えてくれますね。
私もそういうコンサートを目指したいです。

 

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2016.1.21【ホール練習】

ホールのグランドピアノを1〜2時間自由に弾けるというイベント。
低料金が人気で、様々なホールで開催されるようになりました。
今日は横浜市泉区民センター「テアトルフォンテ」で練習してきました。

テアトルフォンテに来たのは今日が初めて。
このイベントでも2時間連続だと3,000円と格安で、ありがたい限りです。

386席のテアトルフォンテは、音楽よりも演劇や人形劇、古典芸能などに適した会場で、
ステージもカーテンに囲まれています。
こういうステージは、音が吸われまくってしまうものですが、
今日は反響板も並べられており、思ったよりも自分の音が聴きやすく感じました。

反響板は高さ2メートルほどの可動式の板を並べたもので、天井部分は筒抜けです。
余韻をたっぷり楽しんで弾きたい時には物足りないかもしれませんが、
練習にはちょうど良い感じです。

 

今日はショパン「舟歌」とグリーグ「ピアノソナタ」を練習。
録音と録画もしました。
2時間の間、けっこう前向きな気持ちで弾けたように思っていましたが、
後で録音・録画を確認すると、何だか演奏に勢いのようなものが足りません。

身体の使い方が足りないのか、なんとなく手先で弾いているというか、
気持ちが音に乗っていない感じです。

見えない疲労がたまっているのでしょうか・・・
気分と音楽の勢いに、かなり差を感じました。
不十分な身体の動きを補おうと、頭で色々と考えすぎているのかもしれません。

 

ホールなど広い場所での練習は、毎回様々なことに気づかせてくれます。
今回はやや痛い目を見ましたが、それも経験。
これからも利用したいイベントです。

 

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