2016.3.6【リサイタル グリーグ:抒情小曲集 全曲演奏会 vol.5(最終回)】

10集66曲から成る、グリーグの「抒情小曲集」。
1回に2集ずつ、5年に渡って演奏するリサイタルシリーズが、最終回を迎えました。

今回は「オール・グリーグ・プログラム」です。
前半は「抒情小曲集  第9集  op.68」と「同 第10集  op.71」(計13曲)。
後半には、22歳の作「ピアノソナタ  ホ短調  op.7」、
そして晩年の大作「スロッテル(ノルウェー農民舞曲集) op.72」から6曲を演奏しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
ソロリサイタルも35回目。
今回は、いくら練習を積んでも、なぜか確信が持てず、
日にちだけがどんどん過ぎて行くような焦りに襲われました。
これまでに経験したことのないほどの焦燥感でした。

おそらく、初めてリサイタルにかける曲が多かったためだと思います。
今回に限らず、このシリーズでは毎回、初披露の曲がありましたが、
初めて弾く曲というのは、大きな不安がつきまといます。

著名なピアニストでも、初めて弾く曲の時はとてもナーバスになり、
出番ギリギリまで、楽屋のピアノを弾いていたりするそうです。

その分、準備はいつも以上に綿密に、予行練習も重ねますが、
実際にチケットを買って聴いて下さるお客様の前で弾くのは、やはり別物。
挑戦は良いけれども、思った以上に心身の負担が大きかったと、
計画の甘さを痛感しました。

しかも今回は、最終回。
「このシリーズを立派に終わらせたい」と思う気持ちが、
ますますプレッシャーとなって、のしかかります。

 

さらに、前回(2015年3月のvol.4)から、
このシリーズをやる大きな目的の一つが無くなってしまい、
目標を見失ってしまいました。

いったい自分は、何のためにこのリサイタルをするのだろう・・・
モチベーションも上がらず、途方にくれた時期もありました。

でも、チケットを販売して開催する以上、
時間とお金をかけて聴きに来て下さるお客様に対して、責任があります。

モチベーションの低下と、お客様への責任感。
その狭間(はざま)で、精神状態はかなり悪かったように思います。

「この5年の蓄積を信じる」
「これまで通り、一曲一曲をていねいに弾いていく」
と自分を励まして少しずつでもやるべきことをやり、
日々の些細な発見にも喜ぶようにしながら、何とか自分を保っていった・・・
そんな毎日でした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2週間前には井上二葉先生のレッスンを受講。
レッスンを受ける際は、遅くとも本番の1ヶ月前には行くようにしていますが、
今回はあれこれ悩んでいるうちに、もう2週間前になり、
あわてて駆け込んだような形になってしまいました。

10日前には横須賀市文化会館で、
5日前には横浜市泉区民センター「テアトルフォンテ」で、ドレスも着て通し練習。
外での練習は気分転換も兼ねられて、精神的に良かったと思います。

 

そんなこんなの状態で臨んだ本番でしたが、
リピーターのお客様も多いためか、客席の雰囲気がとても暖かく感じ、
気持ちの上で本当に助けられました。

 

第1回からご来場下さっている井上先生から、
「これまでで一番良かった」とお励ましの言葉をいただいたり、
「グリーグのCDを出してほしい」というご意見・ご感想をいただいたり、
様々な反省の中にも、有難い気持ちで終わることが出来ました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5年計画のリサイタルシリーズが終わりました。
この5年で、私は成長出来たのだろうか・・・
その辺りはまだ自信がありません。

でも、苦しいことが多かった中、5回全てをやり遂げたことは、
小さな達成感となって心に残りました。
「これから何があっても、ある程度、対処していける」と思えるようになったことは、
財産だと感じています。

今年は横須賀でのリサイタルも、リニューアルに備えてお休み。
軽い燃えつき感が続きましたが、1ヶ月近く経ってやっと、
次のリサイタル計画を考える気力が戻ってきました。

 

これまで、その時その時に、全力で判断してきましたが、
思い返せば、反省点だらけです。

でも、無駄だったこと、無益だったことも含めて、今はいったん肯定し、
新たな一歩を踏み出して、さらに自分の力を磨いていけたらと願っています。

Indexのページを新しいウインドウで開く>