2016.5.28【伊藤忠商事 東京コーラス部 コンサート2016】

高校の友人・寺村朋子さんが伴奏ピアニストを務めている、伊藤忠商事東京コーラス部で、
伴奏の共演を致しました。

曲は、オーケストラ部分をツェルニー(ピアノ練習曲で有名)が連弾(1台4手)に編曲した、
モーツァルトの「レクイエム」です。

「レクイエム」にピアノ連弾版があることは、今回初めて知りました。
寺村さんと連弾出来ることも楽しみで、ワクワクしながら練習に臨みました。

連弾部分の合わせは3月末から始めていましたが、
合唱との合わせに伺ったのは、本番10日前の18日。
当初は1週間前の22日からの予定でしたが、
初めてご一緒する合唱団ですので、お願いして1回早く伺うことにしました。
それでもかなり短期間です。
1回1回の合わせをしっかり集中して行なうよう、心がけました。

モーツァルトの「レクイエム」は、全曲通すと50分以上かかります。
歌は、合唱が歌う曲とソリストが歌う曲が混在していますが、
伴奏には休みがありません。
曲間も、ソナタや協奏曲ほど空けにくいので、通し練習の繰り返しは必須。
自宅での最終練習では、2日前・26日のゲネプロの録音を使いまくりました。

 

合唱の伴奏では、ステージでメンバーの熱い歌声を浴びるのが、最上のひと時。
合唱団の手前にピアノが置かれることが多いので、
身体の左側から、歌のエネルギーをビシビシと感じます。

ただ、全体の音がまとまって聴こえる指揮者の位置と違い、
伴奏者の位置からだと、ピアノから遠い、上手側に立っているパートの声は、
どうしても小さめ、タイミングも遅れ気味に聴こえます。
ソリストの伴奏と違って、声よりも指揮者の動きを頼りに演奏する面が多くなり、
とてもやっかいな部分です。

でも今日は、皆さんの声の勢いとホールの音響の良さが相まり、
全体がまとまった、良いバランスで聴こえて助かりました。

昨年に創部50周年を迎えられた、伊藤忠商事東京コーラス部。
皆さんの熱意はもちろんのこと、
指揮者・吉川貴洋先生の指導にも感銘を受けました。
団体を相手にする指導は、個人レッスンとは違ったエネルギーや気配りが必要だと思います。
歌い手の意欲を引き出していくその手法は、
教え込んで終わりになりがちなピアノのレッスンにも、とても参考になりました。

貴重な機会を与えて下さった寺村さんに、改めて感謝したいと思います。

 

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2016.5.17 【日本フォーレ協会 演奏会】

日本フォーレ協会の第28回演奏会「フォーレと国民音楽協会」に出かけました。

1871年、普仏戦争敗戦の1ヶ月後に、サン=サーンスとロマン・ビュシーヌによって設立され、
「現代フランス人」の作品を積極的に上演してきた国民音楽協会。
そこで紹介された作品から、フォーレをはじめとする5人の作品が取り上げられました。

ショーソン  歌曲集「温室」より2曲
ショーソン 「エベ」
ダンディ  「ピアノ三重奏曲」

クラ  「ピアノのための親密な詩曲集」より2曲
デュパルク  「フィディレ」
デュパルク  「戦いの起きている国へ」
フォーレ  「ピアノ三重奏曲」

ピアノ三重奏曲は2曲とも、ピアノ・クラリネット・チェロという、少し珍しい編成。
この2曲をメインにした、とてもまとまりのあるプログラムです。

どの演奏も良かったのですが、
トリオを演奏された野田祐介さん(群馬交響楽団第一クラリネット奏者)、三宅進さん(仙台フィルハーモニーソロ主席奏者)、
ショーソンとデュパルクの伴奏をされた小坂圭太さん(お茶の水女子大大学院准教授)の、ニュアンスの変化に富んだ演奏が、特に印象に残りました。

毎年の演奏会、企画と演奏の両方を充実させ続けていくのは、とても大変なことだと思います。
志の高さを感じた会でした。

 

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2016.5.5 【小林明代 ヴァイオリンリサイタル】

ヴァイオリニスト・小林明代さんのリサイタルで共演致しました。
今回で5回目の共演。
とてもありがたいです。

クライスラー「プニャーニのスタイルによるプレリュードとアレグロ」
J.S.バッハ  「無伴奏パルティータ 第2番 ニ短調」より  「シャコンヌ」
ブロッホ  「バールシェム」より 「二ーグン」
フランク  「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」

フランクのソナタは、言わずと知れた名曲。
ヴァイオリン以外の楽器で演奏されることも多く、
これほど多くの演奏家を虜にする曲はなかなかありません。

私もこれまで、ヴァイオリンの他、フルートの方とも演奏してきましたが、
何しろ技術的にも音楽的にもハードな曲の一つ。
初めての曲と同様に、慎重に練習を重ねました。

それでも、失敗を怖がる気持ちがなかなか払拭出来ず、困りました。
自分への要求が高くなっているのもあるかと思いますが、
今度こそ大失敗するのではないか…という得体の知れない不安につきまとわれるのです。

放っておくと、どんどん身体がこわばってきます
先週のホールリハーサルでも、ソツなく弾いているだけというか、
平板な印象になってしまっていました。

それでも、納得いくまでやりきるしかありません。
ビデオ録画を確認しながら、呼吸が浅いところや、
メロディーが歌い切れていない所をチェックし、修正していきました。

リサイタル当日、小林さんのヴァイオリンは、響きが豊潤で、それは見事なものでした。
曲が進むにつれて響きがどんどん増していくヴァイオリンに比べ、
私のピアノは、やはりもっと余裕が欲しいところ…
フランクの最終楽章など、もっと力強いタッチで弾けたらと思った箇所もありました。

ピアノ調律は、平山克浩さん。
倍音の響きを、とても美しく仕上げて下さいました。
ホールの空間に倍音が立ち昇っていく様は、弾いていて本当に幸せな瞬間です。
また弾きたいと感じるピアノでした。

 

私は今、自分のリサイタルのリニューアルを考えています。
その中で、今回の小林さんのリサイタルは、
演奏はもちろん、選曲に始まり、1曲1曲に込める集中力、全体の完成度、
そしてお客様やスタッフの方への心配りなど、全てが勉強になりました。

全てを真似できるとは思いません。
でも、何かを改良したいのなら、良いと思ったものを少しずつでも取り入れていかなければと思います。

深いところまで考えさせていただけた小林さんの演奏に、とても感謝しています。


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