2016.12.26 【ホール練習】

格安でステージのグランドピアノを自由に弾ける、ホール解放イベント。
今日の会場は、客席数1,098、ピアノはスタインウェイのD型(フルコンサートグランドピアノ)設置の横須賀市文化会館大ホールです。

今回は2枠(2時間)取れたので、
6月のリサイタルで演奏しようと考えている曲を、全曲弾いてみました。
久しぶりの大ホール、ピアノに慣れるのに少し時間がかかりましたが、
だんだん響き全体をとらえて弾けるようになりました。

ビデオも持って行って録画しましたが、
演奏中の姿勢が改善し、
首が前に出てしまうこともずいぶん減って、ホッとしました。

このイベントは、約1ヶ月前に予約が始まり、予約方法は電話のみです。
先着順であっという間に枠が埋まってしまうので、
参加しようか迷っている余裕はありません。

退院してしばらくは、1ヶ月後の体調が読めなかったので、
このイベントの予約も出来ずにいました。
今回、体が順調に回復し、予約出来たことがとても嬉しかったです。
普段とは違う場所での練習で、気分転換にもなりました。
来年もまた利用したいです。

 

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2016.12.16 【 ゲルハルト・オピッツ シューマン×ブラームス 連続演奏会 第2回】

ドイツピアノ界の正統派、そしてヴィルヘルム・ケンプの後継者としても名高い、
ゲルハルト・オピッツさんのピアノリサイタルを聴きに出かけました。
「シューマン×ブラームス連続演奏会(全4回)」の第2回目です。


シューマン「森の情景  op.82(全9曲)」
シューマン「ピアノソナタ 第1番  op.11」

ブラームス「3つの間奏曲 op.117」
ブラームス「ピアノソナタ 第1番 op.1」


アンコールには、ブラームスの「6つの小品 op.118」から、
最高に美しい「第2番」が演奏されました。
曲目のアナウンスなどはありませんでしたが、
ピアノの前に腰かけられるやいなや、美しく叙情的な曲が始まりそうな気配が漂ったのは、さすがです。

温かみのある音色、深みのある表現はもちろんですが、
どの曲も、どの音も、確信を持って音が出ていて、 
その完成度と安定感に、改めて感服しました。

特にシューマンのソナタは、情熱的ですが書き込みすぎというか、
やや要素の多すぎる曲で、 1つの曲としてまとめ上げるのがとても難しいと思います。
オピッツさんの演奏は、がっちりと俯瞰(ふかん)され、
全4楽章が一つの世界になっていました。


これだけ混みいった曲。
いったいどうすれば、ここまで手の内に入った演奏が出来るのでしょうか・・・

技術的なこと一つとっても、演奏中のオピッツさんは、
上半身がほとんど動いていないように見えます。
10月のシプリアン・カツァリスさんのリサイタルでも同じことを感じましたが、
肩から腕、手指に至るまでの脱力が、完璧なのだと思います。

ピアノは、タッチの力加減が音色に直結します。
どんなに曲の理解が深くても、体のどこかに力みがあると、思う音色が出せませんし、
ミスタッチにもつながります。

退院してから、弾き方の見直しをしていますが、
まだまだ力みを感じることが多いなと感じています。
特に、首が前に出てしまい、姿勢が悪くなり、呼吸も浅くなることがまだ多いようです。
集中して弾いている気分にはなりますが、
その姿勢では結局、音全体を聴けませんし、
長期にわたると、体にも大きな負担がかかってしまいます。

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今年はあまりコンサートに行けませんでした・・・
毎年楽しみにしている「フェスタサマーミューザ」も含め、
一度もオーケストラを聴きに行くことが出来ませんでした
でも行けたコンサート一つ一つがとても勉強になり、
本当に記憶に残るコンサートでした。

体も順調に回復してきています。
来年はもっといろいろなコンサートに出かけて、
また新たな感動を得て、新たな気づきを得て、
自分の演奏に生かしていきたいと思います。

 

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2016.12.11 【セルゲイ・カスプロフ ピアノリサイタル】

横浜市栄区民文化センター「リリス」の「ピアニストとの出逢い」シリーズ。
ロシアの次世代ピアニストと言われる、1970年から90年代生まれの名ピアニスト4人によるリサイタルシリーズです。
客席数300席で音響も素晴らしく、ソロ演奏がとても聴きやすいリリスホール。
3回目の今日、やっと行くことが出来ました。


今日のピアニストは、昨年の初来日で話題となったセルゲイ・カスプロフさん。
演奏を聴きに行くのは初めてです。

J.S.バッハ(ブゾーニ編)「シャコンヌ ニ短調」

ラフマニノフ「コレルリの主題による変奏曲」

ラモー(ゴドフスキー編)「サラバンド」「メヌエット」
・・・前日のトッパンホールで行われたリサイタルでは、ここでシューマン「アラベスク」が演奏されたそうです。
「アラベスク」も素敵ですが、こちらはめったに聴ける曲ではなく、ちょっと嬉しかったです。

ドビュッシー「映像 第1集(全3曲)」

プロコフィエフ「ソナタ No.7 『戦争ソナタ』」

「デカダンス(耽美主義・退廃主義)の影」と謳われたプログラムで、
19世紀末の雰囲気を内在した、とても知的な選曲です。

聴衆へのお辞儀もそこそこに、腰掛けるやいなや、すぐ弾き始めるタイプのピアニスト。
打鍵が非常に速く、音の表情がくっきりと見えてきます。

内声やベース音の際立たせ方も見事。
演奏に熱がこもってきた時に、特にベース音を強調するようですが、
確信を持って弾いている音で、完成度も素晴らしいです。
全体がとても多層的に聴こえました。

何よりも、大きな背景というか、豊かなバックグラウンドが、
カスプロフさんの背を大きく包んでいるように感じました。
ロシアという国が積み重ねてきた文化の厚みのようなものなのでしょうか。
とても不思議な感覚でした。

アンコールは2曲。
スカルラッティ「ソナタ ニ短調  K.213」と、
ヴィラ・ロボス「道化師のお人形」(「赤ちゃんの一族」第1組曲「赤ちゃんの家族」より)。


プログラム中は、少し音の固さの気になるところもありましたが、
スカルラッティの柔らかく美しい響きが始まったとたん、リサイタルの印象ががらっと変わりました。
「この曲、こんなに良い曲だったんだ・・・」
帰宅後にさっそく、楽譜をひっぱり出してみたのは言うまでもありません。

ヴィラ・ロボスではまた一転して、すばやいトレモロも鮮やかな名人芸。
聴衆を楽しませる選曲で、客席の雰囲気もとても明るくなったように感じました。

その後、自分の練習でも、曲の背景や背負っているもの(作者、国、時代など)を大きく感じながら弾くよう意識したら、弾くのがかなり楽になりました。
曲の背景は必ず調べますが、今回、それが演奏者の背に見えたような体験をしたので、背中に意識が行き、手元を見つめすぎる姿勢が正されたからかもしれません。
素晴らしい演奏家から得るものはやはり大きいですね・・・

 リリスホールでは、ワンコイン(500円)で聴ける国内若手演奏家による、休憩なしの短いコンサートシリーズが好調なようですが、
せっかく素晴らしい音響のホール、今回のようなじっくり腰を据えて聴くシリーズもますます充実させていってほしいです。
次回・最終回のルーカス・ゲニューシャスさんのリサイタル、ぜひ聴きに行きたいです。

 

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2016.10.21 【井上二葉 演奏会 古沢淑子生誕100年記念ー 先達への感謝ー】

井上二葉先生のリサイタルが、浜離宮朝日ホールで開催されました。
今回は歌曲を交えたプログラムで、
歌曲の際には、先生の譜めくりをさせていただきました。


今夏に入院していた頃は、先の体調が読めなかったため、
夜開催のリサイタルに都心まで出かけられるかどうか、とても心配でした。
幸い体が回復し、10月にレッスンを再開出来た時は、
「これで譜めくりにも伺える!」と、ホッとしました。

タイトルにある古沢淑子さんは、ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」の日本初演を始め、東京芸大や桐朋学園でも教鞭をとるなど、
現在の日本声楽界の礎を築かれたと言っても過言ではないソプラノ歌手です。


井上先生は長く伴奏者を務めていらしたとのことで、
今回はその感謝の気持ちを込められたリサイタル。
古沢淑子さんが好んで採られたという、古典から現代への流れを汲むプログラムです。

リュリ:「メヌエット 森の中で」「優雅なアリア」「クーラント」「ジーグ」

ラモー:悲歌劇《イポリットとアンジー》より
「ロンド形式のアリア」
「恋するうぐいす(ソプラノ独唱)」

リュリ:悲歌劇《アティス》より
「アティスは幸福すぎます(ソプラノ独唱)」

カンプラ:オペラ・バレエ《ヴェネツィアの饗宴》より
「蝶の歌(ソプラノ独唱)」

フォーレ:「夢のあとに」「月の光」「ひそやかに」「グリーン」「9月の森で」(以上ソプラノ独唱)
「ノクターン No.10」「舟歌 No.12」

ラヴェル:「ソナティネ」
「ハバネラ形式のヴォカリーズ(ソプラノ独唱)」

ドビュッシー:「ビリティスの歌(全3曲)」「ヴィヨンの3つのバラード(全3曲)」(以上ソプラノ独唱)

メシアン:《前奏曲集》より
「鳩」「悲しい風景の中の恍惚の歌」「軽快な数」「風の中の反映」
「3つの歌(全3曲・ソプラノ独唱)」

曲数は、「ソナティネ」の各楽章を1曲ずつとすると、実に全32曲!
手の内に入っていらっしゃる曲ばかりとは言え、練習はやはりハードなはず。
どうやってその体力をキープなさっているのか、伺ってみたいところです。

独唱は、北鎌倉女子学園が世界に誇る名ソプラノで、
古沢淑子さんの孫弟子でもいらっしゃる、浜田理恵さん。
声・発音の美しさと、豊潤な音楽性が素晴らしく、私も大ファンです。

今日はもちろんゲネプロから伺いましたが、
ピアノも歌も、ごく部分的に確認するだけの、とても短いリハーサル。
あとは雑誌掲載用の写真撮影があるだけで、それ以外は控室で休まれているようでした。

ホールはお客様が入ると響きが大きく変わりますから、
リハーサルは確認程度にして、その分、体力を温存した方が良いのですね。
全曲を通しておかないと不安な私は、まだまだ修行が足りません…


先生の演奏は、舞台袖でもはっきりわかるほど音色が骨太で、
かつ長年弾き込まれた余裕を十二分に感じさせる、さすがなものでした。
日頃のご鍛錬がしのばれます。

今日は自分が弾くわけでもないのに、開演前はとても緊張していました。
先生の大切なリサイタル、粗相があってはいけないと焦る気持ちがつのりました。

でも、いざステージに出ると、気持ちがスーッと落ち着き、体が楽に動きました。
不思議なものです。
井上先生と浜田さんのオーラで、ステージが温かく包まれていたおかげかもしれません。

譜めくり中は楽譜を見るのに集中しますが、
それでも、先生の弱音の出し方やペダル操作など、
そばで見なければ分からない部分も伺い知れて、ありがたかったです。

配布されたプログラムには、古沢淑子さんのご経歴に続けて、
井上先生とのご縁が紹介されていました。
先生ご自身の知性あふれる文章で、伴奏されるようになった経緯や、
リサイタルのための練習がとても厳しかったことなどが、感謝のお気持ちとともに綴られていて、読んでいて胸に迫るものがありました。

無事にお手伝いに伺えて、本当に、本当に良かったです。

 

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