2017.9.19  【コンセールC(セー)  第87回演奏会  日本の歌シリーズXXV   ー日本のうた・唄・歌ー】

 

東京藝術大学名誉教授のメゾソプラノ・中村浩子先生が主宰されている、コンセールC(セー)。

会員の皆様は、コンサート、オペラ、ミュージカルなどで多彩に活躍されている方々ばかりです。

毎年フランスものと日本もののコンサートを開催されていて、今回で実に87回目。

今回、初めて伴奏をさせていただきました。

出演者9名中4人の方、ソプラノの佐伯葉子さん、阿部果織さん、小田切一恵さん、

バリトンの根岸一郎さんの伴奏と、

全員でのオープニング「さくらさくら」の伴奏を致しました。

 

驚いたのは、その意欲的なプログラム。

初めて耳にする曲も、たくさんありました。

 

早坂文雄「うぐひす」(無伴奏)

石井観「日本民謡による10の歌曲」より

間宮芳生「日本民謡集」より

平井康三郎「日本の笛」より

福島雄次郎「わがふるさとの歌」より

梁田貞「城ヶ島の雨」

 

橋下國彦「お六娘」

山田耕筰「松島音頭」

山田耕筰「雨情民謡集」全曲

山田耕筰「AIYANの歌」より 

山田耕筰「幽韻」全曲

木村繁「津軽の旋律」より

 

「日本歌曲の歴史的な流れに焦点を当て、

その原点とも云える日本古謡、および日本民謡の流れをくむ歌曲を中心に企画した。」

とのことです。

テーマ性を設けたコンサートは珍しくありませんが、

ここまで内容を吟味された、ありきたりでないプログラムには、

めったにお目にかかれるものではありません。

 

ちなみに、今春のフランスもののコンサートは、

没後80年・オール・ラヴェル・プログラムだったそうです。

ピアノでしたらともかく、声楽でオール・ラヴェルとは驚きです。

 

今回私は、石井歓、間宮芳生、木村繁、そして山田耕筰「雨情民謡集」を受け持ちました。

初めての曲ばかりの上に、資料も少なく、

作曲者や曲について調べるのに、かなり時間がかかりました。

メロディーに民謡をほぼそのままの形で取り入れている曲でも、

伴奏パートは完全な創作で、響きも複雑です。

間宮作品は特に、慎重に音取りを進めました。

 

また、歌詞も方言で書かれているため、

日本語なのに意味のわからない所がたくさんあり、

外国語のように一句一句調べるところから始めました。

 

 

歌い手の皆さんの熱意、曲にかける想いには、本当に感銘を受けました。

元々のレベルの高さはもちろんですが、日本の節回しで書かれた曲をどう歌い、表現するか、

考え続け、悩み続けながら、ご自身の表現を見つけていかれました。

その過程は、伴奏していて実に至福のひと時でした。

 

これだけの準備を積まれているからこそ、お客様に支持されて、

87回という回数を積み重ねていらっしゃるのだと思います。

 

もうお一人のピアニスト・橋美奈さんは、井上二葉先生の門下生でいらっしゃるそうで、

少しカッチリとした奏法や音色の多彩さが、井上先生を彷彿とさせるものがありました。

コンセールCさんの会では、もう何度も伴奏されているそうで、

練習やリハーサルの進め方から、歌い手への声かけまで、

実に心配りが行き届いていらっしゃいました。

 

 

会場の横浜みなとみらい小ホールは、6月にソロリサイタルをしたばかり。

ある程度感触を覚えているつもりでした。

でも、ピアノ(スタインウェイ)の調律が、リサイタルの時とは全く異なりました。

どちらが良いか、ではなく、同じピアノとは思えないほど、

ソロ用とは見事に違う音造りがされていました。

 

弾いたことがあるという先入観、思いこみで会場入りしたことを大後悔。

でも、何とかしてこのピアノに慣れなければいけません。

リハーサル終了後の30分間をお借りして、受け持つ全曲の出だしや、気になるところを再チェック。

「このピアノで弾く」という手ごたえのようなものを、やっとつかみました。

本番では思っていたよりも落ち着けて、この30分に感謝しました。

 

客席には、中村浩子先生とお親しい井上二葉先生もご来場下さり、

「とても良かった。低音の響かせかたをマスターしたわね。」

と、思いがけず、お褒めの言葉を頂戴しました。

ただ、「おじぎがゆっくりすぎる。

丁寧なのは良いけれど、歌い手より長く頭を下げていてはダメ。

歌い手を立てなければ。」

とのご指摘も…

以後、注意致します…

 

 

伴奏は、相手の決めた曲を弾くのが基本です。

知らない曲、弾いたことのない作曲家、ということもしょっちゅうです。

いったいどうやって弾いたら良いのかと、途方に暮れることも少なくありません。

でもそれは、自分の幅を広げる、自分の限界を超えるチャンスだと思っています。

 

今回は特に驚くような曲ばかりでしたが、どの曲もとても興味深く、

練習や合わせを積むうちに、自分の体内に共鳴する部分が出てくるのが嬉しかったです。

 

このコンサートの後も、別のコンサートやオペラ出演が続く歌い手の皆さん。

有り難い出会いに感謝し、ますますのご活躍をお祈りしたいと思います。

 

 

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