2017.12.1 【毎日ゾリステン  吉田浩之テノールリサイタル】

 

東京藝大声楽科教授の、吉田浩之さん。

山田耕筰「雨情民謡集」を練習していた頃、Youtubeで吉田さんの演奏を聴き、

軽やかでみずみずしい美声と、のびやかで安定感のある表現に魅せられました。

横浜みなとみらいホールでリサイタルのチラシを手にし、ぜひ聴きたいと思っていました。

 

「毎日ゾリステン」は、学生音楽コンクールも主催している毎日新聞社主催のコンサートで、

個人で演奏会を開くのが困難だった時代、優秀な演奏家を支援する目的で、

1963年に始められたそうです。

 

通常のコンサートでは取り上げにくいような、意欲的な曲目も聴きどころだそうで、

今回も、リストとショパンの歌曲という、めったに聴けないプログラム。

リストはイタリア語ですが、ショパンは全てポーランド語で歌われました。

 

ショパンはドイツ語で歌う方が多いと思いますが、

月刊誌「ショパン」のハンナ社から、

歌詞の読み方や詳細な解説の載った歌曲集が出版されましたので、

これからは原語で歌う方が増えていくかもしれません。

 

リスト:金色の髪の天使

リスト:ペトラルカのソネット(全3曲)

 

ショパン:17の歌曲 op.74より

                乙女の願い/春/悲しい河/酒場の唄/彼女の好きな場所/

                 私の目の前から消えて/使い/メロディ/つわもの(戦士)/

                 僕の可愛い甘えんぼさん(いとしい人)/木の葉が舞い落ちる(墓場の歌)

 

アンコールには、

「今夏に亡くなった、ローマ留学中のコレペティトゥア(オペラ稽古でのピアニスト/歌手の個人稽古も担当する)の先生に捧げます。」

とお話があり、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」が歌われました。

 

期待通りのみずみずしい美声、豊かな情感のあふれる表情力を堪能しました。

2ページの短い曲でも、5分以上かかる長い曲でも、

すみずみまで神経の行き届いた、余裕を感じさせる演奏。

ショパン「私の可愛い甘えんぼさん」の終盤、「ただキスだけを!」では、目頭が熱くなりました。

 

また、コンサートホールのピアノは、少し高めのピッチ(A=443など)で調律されることが多く、ソリストの音程が微妙に低く感じられることがありますが、

そのような不安定さは全く感じませんでした。

 

ピアノは東京藝大講師の丸山滋さん。

今回は「上手な伴奏者を聴きたい」という目的もあって出かけましたが、

どの曲も、深い理解と共感をもって演奏されていると感じました。

伴奏者は、ソリストの選んだ曲を請け負うことがほとんどで、

選曲に携わることはあまりありません。

ソロで弾く以上に、曲への理解と共感が必要だと思います。

 

単純な伴奏型でも、ハーモニーのバランスが心地良く、

タイミング合わせも、ただ歌を待っているのではなく、

相手の声も自分の音も聴き切ってコントロールされているような、抜群の安定感。

歌い手を安心させるピアノだと、感じ入りました。

 

アンコールの「アヴェ・マリア」の伴奏も、つい柔らかな感じで弾いてしまいがちですが、

音色の柔らかさを保ちつつも、バロックらしい整然としたたたずまいが感じられ、素敵でした。

 

興味深いプログラムを質の高い演奏で楽しめたコンサート。

また出かけたいです。

 

 

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2017.11.19 【音楽と遊ぶネコたち〜雨田光弘 原画の世界展Z プレギャラリーコンサート】

                    【驚異の超絶技巧展  明治工芸から現代アートへ】

 

 

チェリストで「アマネコ」「音楽と遊ぶネコたち」でおなじみの画家・雨田光弘先生。

昨年2016年は、アマネコ誕生40周年だったそうです。

今日はその原画展に出かけました。

 

会場は、西武新宿線の沼袋駅から徒歩3分の、中野山田屋シルクラブ。

非常に趣きのある日本建築で、駅からほど近いところにこのような建物があるのが驚きです。

エントランスをくぐる時から、ドキドキしました。

 

夏の室内楽研究会が行われた雨田先生のご自宅にも、たくさんの原画が飾られていましたが、

今日は初めて接する作品もたくさんあり、時間を忘れそうになりました。

原画は筆の跡も美しく、彩色のにじみ具合にも見入ってしまいます。

 

特に好きなのが、2018年ポストカードカレンダーにも使われている<<ジャック・ルーシェ「プレイ・バッハ」>>。

ドラマーのネコちゃんの表情が、最高です。

 

展覧会本番は12月ですが、今日11月19日は雨田さんのお誕生日でもあるそうで、

奥様でピアニスト・元桐朋学園大学教授の雨田信子先生、ヴァイオリンの渡辺亜美先生とのプレギャラリーコンサートが開かれました。

 

<<ピアノソロ>>

ショパン:エチュード op.25-1「エオリアンハープ」

ショパン:ノクターン第5番 op.15-2

ショパン:ワルツ第6番「小犬」

 

<<ヴァイオリン&ピアノ>>

ドルドラ:思い出

ビショップ(ファーマー編):ホーム・スウィート・ホーム(埴生の宿)変奏曲

 

<<チェロ&ピアノ>>

シューマン:民謡風の5つの小品

 

<<ヴァイオリン&チェロ&ピアノ>>

モーツァルト:ピアノトリオ第3番  変ロ長調  K.502

 

終演後には、豪華なお誕生日ケーキが登場するサプライズも!

長年のお付き合いがあるお客様や、教え子達でいっぱいの会場が、

さらに暖かく和やかな雰囲気で包まれました。

 

原画展もコンサートも素敵でしたが、

先生方が数十年にわたって演奏を続けてこれられていることに、改めて感銘を受けました。

いつも変わらぬたたずまいのお三方ですが、

何と「3人合わせると、世界現役最高齢トリオ」だそうです。

芸術家同士、長い年月の中ではぶつかることもあるでしょう。

年齢を重ねれば、体調の不安も抱えます。

その中で信頼関係を築き、それを維持し、演奏に昇華させていく…

私もそんなことが出来たらと、憧れを感じずにはいられませんでした。

 

 

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今日はその足で、三越前の三井記念美術館へ向かい、「超絶技巧展」を観賞しました。

動植物や食べ物などをリアルを表現した明治工芸90点に加え、

現代作家の作品50点が並べられた特別展です。

 

新聞で紹介されていた学芸員さんの、

「現代美術ではコンセプトが重要視され、職人技は低く見られがちだった。

でも、圧倒的な技術力は人を黙らせる。」

というお話に惹かれて、出かけました。

 

木彫り・牙彫り、金工、漆工、陶磁、七宝、刺繍絵画など、

実に多彩なラインナップ。

「圧倒的な技術力」はもちろんのこと、

それを一つの作品としてまとめ上げるセンスに目が惹きつけられ、見入ってしまいました。

 

挙げるとキリがないのですが、

例えば、1本の木から彫り出された、秋刀魚(さんま)。

何と、のっている皿も同じ木から彫り出されていました。

象牙を彫って彩色したキュウリは、思わずかじりたくなるような瑞々しさで、

花や葉、蔓(つる)も、実にリアル。

尋常でない観察眼と技術に、心底驚きました。

 

各作品のそばに掲示されている解説も、とても簡潔で分かりやすかったです。

 

明治工芸は主に輸出用に作られていましたが、近年になって国内に買い戻され、

展覧会も相次いでいるそうです。

長く絵画や彫刻が上位で、工芸は低く見なされてきた美術界。

その認識が変わり始め、工芸の再評価、

そして実力ある現代作家の発掘という動きには、とてもワクワクしました。

 

音楽も、クラシックを高尚なものとして、

それに携わる者が妙な特権意識を持っていた時代がありました。

今、そのように偏った価値観では、良い音楽を見出すことが出来ない、と感じます。

 

会場の三井記念美術館が置かれる三井本館の建物は、国の重要文化財に指定されているそうです。

地下鉄の出口のそばにありながら、クラシックなたたずまいの洋風建築で、

壁のカーテンや敷かれた絨毯に至るまで、重厚な趣きが感じられる、

とても落ち着いた空間でした。

 

今日は展覧会・コンサートに加えて、

対称的な建築物も味わえた、贅沢な一日でした。

こんな日をまた持ちたいです。

 

 

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2017.10.27/11.5  【コーラス伴奏】

 

毎年恒例の、イベントでのコーラス伴奏。

昨年は療養中で休んでしまっていましたので、

代理のピアニストの方にお願いしていました。

今年は無事に参加出来て、本当に良かったです。

 

曲数の多い日もあり、準備はこれまで同様大変でしたが、

当日はやはり、「ここに来られて良かったな…」と、しみじみ感じました。

 

このイベントでの伴奏は、ステージでのリハーサルが出来ず、

いつもぶっつけ本番です。

ピアノの状態もあまり良くなく、今回も出だしのバス音がちゃんと鳴らなかったりしました…

その後は無事に切り抜けましたが、自分のポテンシャルの低さを思い知らされました。

どんなピアノに出会っても、もっと弾きこなせなければ…

 

この秋は、やはり昨年休んでしまった音楽教室の発表会にも、

無事に出席出来ました。

日常を取り戻せたことはもちろん嬉しいですが、

イベントや発表会では、その有難さもひとしおです。

身体を大切にして、また来年の秋もがんばろうと思います。

 

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