【2019.2.9 渡辺規久雄 ピアノリサイタル】
昨日に続けて、コンサート通いです。
雪になることが心配されましたが、ちらちら舞う程度の雪でほとんどが雨。
積もることもなく、電車も遅れず、助かりました。
渡邉規久雄さんはお祖母様がフィンランド人でいらっしゃり、
北欧音楽、特にシベリウス作品に造詣が深いピアニストです。
2015年には、フィンランドのシベリウス協会から「シベリウスメダル」も授与されていらっしゃるそうです。
チラシによると、2003年に始まった「オール・シベリウス・リサイタル」。
3年から5年置きに開催され、5回目の今日が最終回です。
抒情的瞑想(全10曲) op.40
2つのロンディーノ op.68
4つの抒情的小品 op.74
6つのバガテル op.97
8つの小品 op.99
組曲「ベルシャザール王の饗宴」(シベリウス編曲/全4曲) op.51
交響詩「フィンランディア」(シベリウス編曲) op.26
アンコール:抒情的ワルツ op.96a
昨日の若林顕さんのリサイタルでも感じましたが、
2,3分の小品であっても息の長いフレーズが感じられ、スケールの大きな演奏でした。
「フィンランディア」や「ベルシャザール組曲」も、長い曲ではありませんが、
大曲の風格を感じました。
しかも、無駄な力みの全くない弾き方で、とても楽に弾いているように見えます。
(もちろん「見える」だけですが)
後半のプログラムが始まる際、渡邉さんのご挨拶がありました。
「このところずっと晴れだったのに、今日に限って雨。素行を反省している。」
と、いきなりユーモアを交えたご挨拶に、客席からは笑い声が起こりました。
「シベリウスの作品番号のあるピアノ曲を全曲弾くリサイタルシリーズで、今日が最終回。
以前、来てくれたハンガリー人ピアニストから、
『自分はこれまで色々なコンサートを聴いてきたけれど、
始めから終わりまで全て知らない曲だったコンサートは初めてだ』と言われた。」とも。
ここでも客席が笑いに包まれます。
毎回このようにご挨拶をされているのか分かりませんでしたが、
雰囲気がぐっと柔らかになりました。
クラシックのコンサートでも、演奏者がお話しをすることは珍しくなくなってきました。
それでも、笑いを取るようなお話しは、そういうトークが売りでもない限り、難しいです。
それでいて、コンサートの雰囲気を全く壊すことなく、スッと演奏へ移られた渡邉さん。
これはかなり余裕がないと難しいことで、音楽家としてはもちろん、
人としての器の大きさを感じました。
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チラシに載せられた寄稿文に、
「もしフィンランドにシベリウスと彼の音楽がなかったなら、現在のようなアイデンティティーを持つ国にはならなかったでしょう。」
という一文がありました。
その通り、シベリウスの音楽には、どんなに小さな曲でも、音楽的に広い視野と、
社会的・文化的な背景の大きさを感じます。
ピアノ曲だけでも、全曲演奏に意義のある作曲家だと、改めて感じました。
このリサイタルシリーズを知らずにいたことが、本当に悔やまれます…
でも、1回でも聴きに行けて良かったです。
2日連続でのピアノリサイタル。
音楽の豊かさ、奥深さを改めて感じることが出来ました。
得られたことを糧に、また精進します。
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【2019.2.8 若林顕セルフプロデュース ショパン全ピアノ作品シリーズ vol.5】
横浜市戸塚区民センターさくらプラザホール主催の、若林顕さんのリサイタルシリーズ。
ショパンのピアノ作品全曲を1年に5回、3年間で15回のリサイタルで網羅するコンサートです。
5公演ずつのセット券(何と10,000円!)で毎回聴きたいところですが、
金曜日の夜で行けないこともあり、今回でやっと2回目の来場。
今日は「ショパンの墓前で 愛の記憶の中で」というサブタイトルで、
珍しい小品も含まれていました。
葬送行進曲 ハ短調 op.72-2
4つのマズルカ op.33
タランテラ 変イ長調 op.43
ドイツ民謡「スイスの少年」による変奏曲 ホ長調 KK.Wa/4
変奏曲「パガニーニの思い出」
2つのノクターン op.62
(この後に、3分くらいの短い休憩がありました。)
ピアノソナタ第2番「葬送」変ロ短調 op.35
アンコール曲
ラフマニノフ:前奏曲 ニ長調 op.23-4
ワーグナー(リスト編曲):楽劇「トリスタンとイゾルデ」より 「イゾルデの愛と死」
・・・・この大曲をアンコールで聴けるとは思ってもみませんでした。
短い休憩の後、ピアノの鳴りがスッと良くなったように感じました。
調律師さんが手を入れたわけでもないので、弾き方の変化なのでしょうか。
深く豊かな音色と大きなスケール感には、いつも感動します。
そしてどの曲にも、高雅な品格がありました。
まさに日本が誇る巨匠、ヴィルトゥオーゾの演奏でした。
開演前に近くの客席から聞こえてきた話。
「本来なら、ここ(戸塚)ではなく、東京のサントリーホールで弾くようなピアニスト。」
「この料金(1回2,500円)では、とても聴けない。」
「横浜みなとみらいホール(もちろん大ホールでしょう)でも、最低5,000円はする。」等々…
確かにさくらプラザホールはクラシック音楽専用ではない、多目的ホールです。
実際、都内から聴きに来ている方もいるそうで、戸塚で聴けるこの企画は特別なのですね。
ありがたいことです。
ショパンの作品には、未出版の曲(op.66以降の番号の曲と、op番号のない曲)や、
近年になって見つかった楽譜などがたくさんありますが、
このリサイタルシリーズでは、それらも含めた全曲が演奏されるそうです。
ショパンは、未出版の作品を自分の死後に焼却処分するよう、友人に託しましたが、
焼くのはしのびないと感じた友人が、あえてショパンの遺言に反して保存・出版。
多くの作品が残され、演奏され続けていきました。
その中には「幻想即興曲」などの名作もありますが、やはり未熟な曲もあります。
未熟な曲を聴くに耐えるように演奏するには、相当な技量とセンスが必要です。
今日の1曲目「葬送行進曲」は、最後に置かれた「ピアノソナタ第2番 葬送行進曲つき」を彷彿(ほうふつ)とさせるような、深く豊かな演奏でした。
最初の音から、その世界に引き込まれました。
「スイスの少年による変奏曲」は、私も中学生の頃に勉強したのですが、
若林さんの演奏は何とも軽やかで、かつ潤いのある音色。
こんな演奏を聴いて勉強出来ていたらなあと、感じ入りました。
シリーズ2年目(vol.6〜10)は、今年の5月からスタートするとのこと。
ピアノトリオやピアノ連弾曲も演奏されます。
若林さんはお若い頃に雑誌のインタビューで、
「音楽に奉仕する音楽家になりたい。と話していらしたそうです。
まさにその通り、「音楽の求道者」というキャッチコピーにうなずけるほど、迫真に迫る若林さんの演奏。
ぜひまた聴きに来たいです。
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【2019.1.7 試演会】
北鎌倉女子学園高校音楽科の同窓会「奏友会」。
年4回の新聞発行の他、発表会や、受験生のための模擬試験などを毎年開催しています。
模擬試験には、誰でも自由に参加出来る試演会が設けられていて、
最大20分まで演奏出来ます。
今回は、5月のリサイタルプログラムから4曲を弾いてきました。
グリーグ:「抒情小品集 第5集」op.57より「鐘の音」
ドビュッシー:「前奏曲集 第1集」より「沈める寺」
サン=サーンス:「6つの練習曲」op.111より「ラス・パルマスの鐘」
リスト:「パガニーニ大練習曲」より「ラ・カンパネラ」
今日の会場は、鎌倉芸術館のリハーサル室。
コンサートホールと違って音の残響がなく、気分良く弾ける場所ではありません。
しかも、ピアノのほど近くに並べられた椅子が客席で、コンサートホールよりずっと至近距離。
試験場そのものといった雰囲気です。
また、別室の練習室で指慣らしが出来るのですが、そこは後輩達に譲るべきところ…。
まさにぶっつけ本番です。
とても厳しい演奏条件ですが、リサイタル前の良い練習になりますので、
これまでも何度も利用してきました。
後輩やお世話になった先生方の前で弾くプレッシャーも、年々強まりますが、
その中で平常心を保ち、自分の呼吸のリズムをキープする練習になります。
これまでよく緊張でポカミスをしてきましたので、とにかくあわてず焦らずに。
…と思っていたら曲間の時間を多く取りすぎたのか、演奏時間が5秒オーバーしてしまいました…
帰って録音を確認したところ、「ラ・カンパネラ」の音色が柔らかすぎるように感じました。
この曲はかなりの部分がp(ピアノ・弱音)ではありますが、
低音で響く鐘の音が多いグリーグとドビュッシー、風を模した音形のサン=サーンスに
続けて聴くと、高音の多いリストではもう少し硬めの音色の方が良いように感じました。
グリーグとドビュッシーでは音色を変える際、もっと呼吸に余裕があった方が良かったです。
上半身の脱力が不完全な所を修正すれば、良くなりそうです。
サン=サーンスはもう少しエチュードっぽくといいますか、
全体にサラッとした響きにした方が良いと感じました。
リサイタルに向けて、修正です。
この日のために、お正月返上で練習。
ご近所迷惑にならないよう、三が日は音を出せず、電子ピアノにヘッドホンをつないでの練習でした。
短時間の試演会ではありましたが、やり切ったことが心の支えとなってくれるようで、
参加して良かったです。
リサイタルに向けて、また練習を積んでいきます。