【2019.5.6 ソロリサイタル】
横浜みなとみらい小ホールで、2年ぶりにソロリサイタルを開催致しました。
今年の大型連休は平成から令和への改元をはさんだため、超大型の10連休。
リサイタルはその最終日でしたが、ご家族やご親戚との会食ついでにお立ち寄り下さった方も多く、予想以上のお客様をお迎えすることが出来ました。
今回は「月光、そして鐘の響きへ」と題したプログラムです。
ショパン:夜想曲 第2番 op.9-2
(ショパンが弟子のために書き加えた装飾のあるヴァージョンで、演奏しました。)
ショパン:夜想曲 第8番 op.27-2
ドビュッシー:月の光
ベートーヴェン:ピアノソナタ 第14番 op.27-2「月光」
シベリウス:5つの小品(花のスケッチ) op.85
グリーグ:鐘の音 op.54-6
ドビュッシー:沈める寺
サン=サーンス:ラス・パルマスの鐘 op.111-4
リスト:ラ・カンパネラ S141 R3b-3
アンコール曲
ドヴォルザーク:我が母の教え給いし歌
(母の日が近いことにちなんで)
今回の準備でも様々な気づきがありましたが、特に大きかったのは、
巨匠マリア・ジョアン・ピレシュの提唱する「非永続性(impermanence)」という言葉に関してでした。
2008年放送のNHK「スーパーピアノレッスン」テキストに載っていた言葉です。
「人の生涯で確かなものは、W死Wただ一つ。
その他は全て非永続的で不安定であることを受け入れた結果、人は自由になれる。
演奏も一瞬一瞬変化する生きたもので、同じ練習や同じ演奏を繰り返すと、真実を見失ってしまう。」
初めて読んだ時には、意味が理解出来ませんでした。
その時々で演奏が変化するなんて、巨匠クラスの演奏家だから出来ることで、
普通は日によって演奏を変える余裕などない。
自分には関係ない、と思っていました。
でも今回は、何か心に留まるものがありました。
うつろいゆくものを受け入れる…
その時々の心身の状態や感覚を大切にして、そこから生まれる音をよく聴く…
そうして弾いてみると、身体の力み(りきみ)が抜けるのでしょうか、
イメージが楽に音になることに気づきました。
その気づきからヒントを得て、今度は前腕の脱力を心がけるようになり、さらに身体が楽になりました。
長時間弾いていると前腕がシクシクと痛んでくるのですが、
前腕の脱力を意識すると、その痛みも激減。
心と身体、身体と心がつながっていることを、改めて感じました。
以前、井上二葉先生のレッスンで、
「腕が本当に楽になると、楽に弾ける」と言われたことがありますが、実にその通り。
当時は難しく感じましたが、今やっと、実感することが出来ました。
大型連休中は追い込み練習に明け暮れましたが、
「…このプログラムを練習するのが、あと数日だと思うと寂しい…」
初めてそんな気持ちになりました。
緊張感の中にも、前向きな気持ちが出てきたことが、嬉しかったです。
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リサイタル間際の4月下旬、癒着性の腸閉塞になりかけてしまい、6日間入院してしまいました。
腹部の手術後、傷が修復されていく中で、腸が他の臓器や腹部の内側の壁に癒着してしまい、
腸の内容物がうまく通過出来なくなる病気です。
本当に腸が詰まってしまうと治療も大変ですし、最悪の場合は腸が破裂して命にかかわる腹膜炎を起こすこともあります。
手術前からその説明を受けており、予防の薬も飲み続けていましたが、
なる時にはなってしまうようでした…
私の場合、小腸の一部に通り道の狭い所があるそうです。
昨年の夏も腸閉塞になりかけたのですが、飲み物だけで3日間過ごすことにし、入院は免れました。今回もそれで行けるかと思いましたが、2度目ということもあり、入院する羽目になってしまいました…
どうやら、前日の食べすぎが原因のようです。
日頃は消化の良いものを食べるよう、心がけていましたが、
鎌倉童謡の会での演奏が無事に終わった開放感もあり、要注意食材のキノコや揚げ物を食べすぎてしまいました…
「1週間くらい入院することになる」と言われた時には、目の前が真っ暗になりましたが、
幸い回復は順調で、3日目からは病院外で過ごす「外出許可」が出ました。
午後の数時間ですが、自宅に戻ってピアノの練習をすることが出来、
4月25日には、予定していた横須賀市文化会館でのホール練習へも行くことが出来ました。
それで精神的にかなり落ち着けて助かりましたが、
油断から痛い目に遭ったことを、心の底から反省しました。
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退院し、追い込み練習も終盤に入った5月4日、
朝日新聞朝刊スポーツ欄のコラムに、目が止まりました。
W30歳の「キング」 再び自信をW
4月末に行われた体操の全日本個人総合選手権で、まさかの予選敗退となった内村航平選手に関する記事でした。
両肩の痛みで、「自信」の根拠になっていた練習が十分に積めないこと。
体操選手としてのピークを過ぎた30歳、「首から下は全部痛い」こと。
年明けの初練習で「東京(オリンピック)までの約2年は、楽しみより苦しみの方が多いと思う。
かなり苦しまないと、東京で『よかった』とは思えないだろう」とのコメント。
同い年の山室光史選手は「この年齢になると、調子が良い日なんて年に2、3日。
もう、やりたくないって思うこともある」と語っていたそうです。
…レベルは違いますが、全てが身につまされるようでした。
体操も演奏も、やり直しのきかない一発勝負。
完璧な準備をしたと思えても、本番で何が起こるかは誰にも分かりません。
そのプレッシャーは、経験を積んでも減るものではありません。
その上、ケガや痛みで、頼みの綱である練習を思い切り出来なかったら、本番への恐怖は計り知れません。
入院中の心境を思い出し、とても人ごととは思えませんでした。
記事ではおしまいに「ヒントになりそうだ」として、アテネ五輪団体金メダルの塚原直也さんのコメントが載っていました。
「若い頃よりも練習量を減らしつつ、ポイントだけをうまく押さえて、
今までとは違う『自信のつけ方』を見つける必要があると思う」
演奏家にとっても、非常に参考になると思います。
井上二葉先生も、
「若いうちは、無理が効く。
年齢を重ねたら、体力ではなく、(腕や身体の)重さを使って、身体そのものを楽に解放する必要がある。」
とおっしゃっていました。
肉体も、時とともにうつろいゆくもの。
それを受け入れ、以前のやり方一本槍ではなく、上手くシフトさせていこう…
そう思います。
次回のリサイタルは、来年2020年の1月19日(日)です。
今回のリサイタルで得られた様々な気づきを大切に、
「非永続性」や「うつろいゆくもの」を楽しみながら、精進したいと思います。
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【2019.4.25 ホール練習】
3カ月連続でのホール練習。
横須賀市文化会館の大ホールで、5月6日のリサイタルの練習をしてきました。
今日はドレスも着て、ご挨拶なども全て本番同様に行う通し練習です。
横須賀市文化会館の大ホールは1098席+車椅子席12席で、本番の横浜みなとみらい小ホールより大きいのですが、
本番と同じ、スタインウェイのフルコンで練習が出来ますので、ありがたい限りです。
客席から撮った録画をチェックしたところ、音は思ったよりもよく響いていました。
その分、脱力がきちんと出来ていないと、途端に音が大きくなりすぎてしまい、バランスを崩してしまいます。
テンポが走りやすいところは修正出来ていたので、
全体にもっと響きにひたるようなゆとりを持って弾いた方が良さそうです。
先月の練習でも、ひたり感の足りなさを感じて修正しましたが、まだ足りなかったようです。
また客席目線で見ると、ご挨拶の話し方やおじぎなどの所作を、もっとゆっくりした方が良いと感じました。
普段よりゆっくりやっているつもりでしたが、まだ不十分でした。
今日は気温25度を超える暑さになり、湿気も多く、4月とは思えないような蒸し暑さでした。
ホールにエアコンは効いていますが、身体が暑さに慣れていないためか、かなりしんどく感じます。プログラムの後半では、額からの汗が目に入ってしまい、痛いほどでした。
ドレスも持って行って、本番通りに着替えもしての練習は大変ですが、
やはり本番通りにやってみて良かったです。
リサイタルまであと10日。
自信を持って、最終調整に入りたいと思います。
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横須賀文化会館のスタインウェイ。
以前はつや消し塗装だったピアノですが、ステージに置かれていたのは、つやのある鏡面仕上げ。
音もずっと良くなっていて、驚きました。
違うピアノに変わったのかと思い、スタッフの方に伺ったところ、
以前からあるピアノをオーバーホール(分解点検修理)し、この3月に戻ってきたとのこと。
塗装も、もとのつや消し塗装を桐たんすのように削り、新たに鏡面仕上げにしたのだそうで、
新品に近い美しさです。
まだ弦を打つハンマーが柔らかく、大きな音が出づらいですが、
弾き込んでいけば、とても良い状態になりそうです。
横須賀芸術劇場が出来て以来、横須賀文化会館ではプロのピアニストのコンサートがほとんどなくなってしまいました。
吹奏楽部の定期演奏会など、アマチュアのコンサートはたくさんありますが、
そちらではどうしても、もう1台のピアノ・ヤマハのフルコンが使われるとのこと。
ヤマハピアノの使用料がスタインウェイより2,000円ほど安いこともありますが、
ヤマハとスタインウェイでは、当然ながら鍵盤蓋に書かれているロゴが違います。
スタインウェイのロゴを見慣れていないと、鍵盤の位置が分からなくなってしまうことがあるので、敬遠されてしまうかもしれません。
きちんと手入れ・修復もされているピアノ、
このようなイベントでも良いので、皆で大切に弾いていけたらと思います