【2019.9.30  日本フォーレ協会 第31回演奏会   創立30周年記念演奏会T】

 

井上二葉先生が顧問をなさっている、日本フォーレ協会。

毎年意欲的なプログラムのコンサートを開催されています。

今年は創立30周年だそうで、2回に渡って記念演奏会が開かれるとのこと。

第1回目を聴きに行きました。

ヴァイオリンの巨匠ジェラール・プーレ名誉会員と井上先生の共演が核となったプログラムです。

 

◯フォーレ:喜び op.84-7 /夜想曲 第6番  op.63

(ピアノソロ:上杉奈央子)

 

《7人の弟子達によるフォーレへのオマージュ(讃歌)》

◯ケックラン:フォーレの名によるコラール op.73bis

◯ラドミロー:フォーレ讃

(ピアノソロ:今井啓子)

 

◯エネスコ:フォーレの名によるピアノのための小品

◯オーベール:フォーレの名による素描

◯シュミット:フォーレの名によるオマージュ op.72

(ピアノソロ:河村晋吾)

 

◯ロジェ-デュカス:フォーレの名による交響詩

(ピアノ連弾:今井啓子・河村晋吾)

 

◯ラヴェル:フォーレの名による子守歌

(ヴァイオリン:ジェラール・プーレ  ピアノ:井上二葉)

 

◯フォーレ:歌曲集「優しい歌」op.61より  4曲

(ソプラノ:駒井ゆり子  ピアノ:須関裕子)

 

◯フォーレ:ヴァイオリンソナタ 第1番 op.13

(ヴァイオリン:ジェラール・プーレ  ピアノ:井上二葉)

 

◯アンコール曲

フォーレ:夢のあとに /子守歌

(ヴァイオリン:ジェラール・プーレ   ピアノ:井上二葉)

 

どの曲も、密な研究の成果がうかがわれる充実した演奏でしたが、

プーレさんと井上先生のデュオは圧巻でした、

プーレさんのヴァイオリンは、まるで柔らかな翼が生えたような音で、

いつまでもこの音楽に浸っていたく、時間を忘れさせられました。

ラヴェルの「子守歌」が、こんなにも表情豊かな曲だったとは驚きです。

 

そのヴァイオリンに決して角を当てることなく、しなやかに支える井上先生のピアノ。

フォーレの「ヴァイオリンソナタ 第1番」のピアノパートは、手が3本必要ではないかと思わせるほどの難曲ですが、左手バスの動きが、しっかり独立して聴こえました。

 

プーレさんはアンコール曲の前に、

「井上二葉さんと共に真の音楽を演奏出来て、感動している。」とお話しされました。

共演者として、これ以上ないコメントですね。

 

また、河村晋吾さんの和音の響きの美しさ(どんなに厚い和音でも決してバラつかず、美しい響きのまとまりになっていました)、

須関裕子さんの、力みのない細やかな音色と一貫した音楽の流れ等々、

勉強になったこともたくさんありました。

 

複数人でプログラムを分担するジョイントコンサートは、ややもすると単なる発表会に陥りがちですが、今日は全ての演奏から、一つのコンサートを創り上げる使命感や責任感が伝わってきました。

30周年を心からお祝いし、今後のコンサートも楽しみにしたいと思います。

 

 

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【2019.9.26  ホール練習】

 

本番前恒例のホール練習。

今日は横須賀市はまゆう会館です。

10月の「逗子童謡の会  25周年コンサート」で演奏する、ショパン「ノクターン 第2番」「幻想即興曲」。

そして来年1月のリサイタルで弾く曲も、抜粋で練習してきました。

 

「ノクターン」と「幻想即興曲」は本番同様に、準備なしでいきなり弾いてみました。

メロディーの音域の鳴りがもう一つ足りない感じだったため、左手の伴奏を控えめにコントロールしようとしたら、バスの音が抜けたりしました…

 

録画をチェックしたところ、左手が少し力んでいるようでした。

力みが取れないまま音が抜けないように気をつけても、今度は固い音色になってしまったり…

弾き慣れているはずの曲でも、油断なりません…

音楽としてはまとまっていたので、左手の脱力を見直して、柔らかな音色を作っていきたいです。

 

リサイタルで弾く曲からは、「ワルツ第10番」op.69-2、「マズルカ第40番」op.59-3、「幻想ポロネーズ」を練習しました。

広い場所で弾くとフレーズを大きく取りやすいのですが、録画を聴くと、歌い方がやや急いでいるように感じました。

全体の音色は良いようでしたので、もう少し音楽の運びにゆとりを持って、整えていきたいです。

ホール練習は、予行練習になるだけでなく、家での練習・準備がうまくいっているかどうかの確認も出来て、とても重宝しています。

また、ピアノの練習は孤独との戦いでもありますので、場所を変えることは良い気分転換にもなります。

来年のリサイタルに向けて、今後も何度か利用することになると思いますが、

良い練習が出来るよう、しっかり体調を整えていきたいです。

 

 

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【2019.9.23  小野綾香 メゾソプラノリサイタル】

 

横須賀芸術文化財団の若手演奏家支援事業として開催されている「フレッシュ・アーティスツ form ヨコスカ」。

昨年の第87回日本音楽コンクール・声楽部門(歌曲)で第3位となり、日本歌曲の最優秀賞「木下賞」も受賞されたメゾソプラノ・小野綾香さんのリサイタルを聴いてきました。

 

今日は日本歌曲ばかりのプログラムで、前半は1926年(大正15年/昭和元年〜1945年(昭和20年)の作品。

 

◯信時潔:歌曲集「沙羅」(全8曲)

 

◯山田耕筰:秋風の歌/この道/赤とんぼ

 

◯大中寅二:椰子の実

◯福井文彦:かんぴょう

◯平井康三郎:秘唱

◯諸井三郎:少年

◯橋下國彦:落葉

 

後半は、1946年(昭和21年)〜1959年(昭和34年)の作品。

 

◯團伊玖磨:歌曲集「五つの断章」(全5曲)

 

◯石桁真礼生:冬の日/さざなみは/ふるさとの

 

◯林光:歌曲集「四つの夕暮の歌」(全4曲)

 

アンコール曲として、小野さんのご専門のロシア歌曲から、曲目は分かりませんでしたが、ツェーザリ(セザール)・キュイの曲を歌って下さいました。

 

一曲目「沙羅」の「丹澤」から、ツヤと温かみを備えた美声に引き込まれました、

どの曲も、すみずみまで配慮が行き渡り、緊張感が維持されていました。

歌曲はピアノ曲に比べて一曲の演奏時間が短く、同じ持ち時間でも曲の数が必要です。

今日のプログラムも、アンコール含めて29曲。

大変な集中力だと思います。

 

「赤とんぼ」の、フレーズの始めの弱音の美しさ、

「椰子の実」の、息の深いところと浅いところの使い分けなど、表現の幅広さも見事でした。

 

日本歌曲だけのプログラムは単調になりやすくて難しい、と聞いたことがあります。

抒情的な感じの曲が多いこともあり、変化をつけるのが難しいのだと思われます。

でも今日のリサイタルはどの曲も、詩の内容はもちろん、共感もよく伝わってきて、途中でだれることがありませんでした。

プログラムに載っていた推薦文でも、

「小野綾香さんが歌い始めると、さまざまな色が見えてくる。」

と称えられていました。

 

ピアニストは、日本音楽コンクールでも共演され、同じく木下賞(共演)を受賞された、森裕子さん。

アンサンブルピアニストとして著名な方で、今日は森さんのピアノを聴くことも、楽しみにしていました。

その音楽の持つ「ビート」や「うねり」が的確で、単に歌の背景を作るにとどまらない表現力。

力みがなく、いつもゆとりを持って歌に寄り添う演奏力。

また、余韻を作りすぎず、リズムの打点をきちんと聴かせるところなど、あらゆるところが勉強になりました。

 

今日は日本歌曲でしたが、アンコールで披露されたキュイも、とても深みのある美しさでした。

ぜひロシアもののリサイタルも、聴いてみたいですね。

 

 

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【2019.9.20  若林顕セルフプロデュース  ショパン:全ピアノ作品シリーズ  ショパンを巡る旅  vol.8】

 

若林顕さんのセルフプロデュース・3年15回に渡る「ショパン:全ピアノ作品シリーズ」の第8回目です。

今日のサブタイトルは「ヴァルデモッサのカルトゥハ修道院からの便り」。

メイン曲目「24の前奏曲  op.28」が書かれた場所にちなんでいます。

 

◯2つのポロネーズ  op.26

◯マズルカ4曲    KK.Wa/7 ・ KKWb/4、 KK.Wb/1、KK.Ua/2

 

◯ノクターン 第19番 ホ短調  op.72-1

◯マズルカ第42番 イ短調 KK.Ub-5「エミール・ガイヤール」

◯演奏会用アレグロ  op.46

 

◯24の前奏曲  op.28

 

◯アンコール曲

リスト:コンソレーション(なぐさめ) 第3番

 

ポロネーズ2曲は、どちらも割とそっけなく終わる曲だと思っていましたが、

とてもはかなく美しい終わり方で、目が覚める思いでした。

 

短いマズルカはややもすると陳腐な演奏になりやすいと思いますが、そこは巨匠・若林さん。

左手の伴奏はマズルカリズムが絶妙に内包された音色で、右手のメロディーのニュアンスも実に多様。

どの曲も素敵な曲に聴こえました。

 

「演奏会用アレグロ」は、もともと3つ目のピアノ協奏曲として書き始められた曲です。

全体に詩情の感じられない、ピアノの良さが生きない曲だと思っていましたが、

オーケストラの奥行きや楽器の違いによる距離感のイメージが、立体感と迫力をもって伝わってきて驚きました。

 

そして、演奏に40分近くかかる「24の前奏曲」。

変化に富んだ24曲が、次々と綴られていきます。

ソナタのような楽章ごとの切れ目もないため、ペース配分が非常に難しく、

後半に出てくる有名な「雨だれ」(第15番)で集中が途切れ、その先の第19番・変ホ長調(高速で音が跳躍し続ける難曲)で崩れてしまう…という演奏に、何度も接してきました…

今日初めて、どこもダレることのない演奏を聴いたように思います。

 

若林さんは演奏の前に、

「ショパンが見たであろう景色や夢が、走馬灯のように現れる。」

とお話しされましたが、まさにその通り。

24曲が一つのまとまった作品として、目の前に現れたように思いました。

 

毎回、ため息の出るような素晴らしさで、

今回もたっぷりと心身の栄養をいただくことが出来ました。

曲の違うリサイタルを、これほどのレベルで年に5回も開催されているのは、本当に驚きです。

どのような準備をされているのか、見当もつきません。

次回11月のコンサートも、今からとても楽しみです。

しっかり聴いて、吸収してきたいと思います。

 

 

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